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 2003年5月11日。小田原市民会館にて『第27回全国高等学校総合文化祭福井大会 小倉百人一首かるた部門 神奈川県代表選考会』(名前が仰々しいね、どうも)が行われ、「部活.ネット」がお邪魔してきた。
(「総合文化祭」というのは、文化部のインターハイに相当します。昨年は神奈川県で開催されたんだよ)

 何せ、スタッフのうち、百人一首のうち一つでも歌を覚えている者皆無。やったことがあるのは“坊主めくり”だけ、という絶望的な状態の中、全くの手探りでの突撃取材であった。

 まず、会場は「和室」である。
 そりゃ、まあ、正月の遊びじゃないんだから、コタツの上でやるはずもないわけだが、入った瞬間に一種異様な感覚に陥る。最初は「控え室」に来てしまったのかと思った。

 次に60名ほどの出場選手のほとんどはジャージ姿である。
 イメージの中に“和服”があるもんだから、それだけでかなりのギャップである。中には膝にサポーターを巻いている子もいる。何故なんだ....?バレーボールの選手みたいだぞ。

 時間が来て、「対戦カード」が発表される。ため息や『ヨッシャ』というわけのわからない声も聞こえる。いよいよ混迷の度は深まる一方だ。

 各選手が所定の位置(たたみ2畳分のスペース)につき、札を並べ始める。

 ここで、競技かるたについて無知な読者諸兄に覚えたてのルール(たぶん、だいたい正しい)をご紹介しておく。
(実は大半は、1回戦の読み手をなさっていた西湘高校OBの門松英子さんにお聞きしたものです)

札はこんなふうに置いてあります。どう並べるかは自由。

前の歌の下の句が読まれている間に集中し、全員が前傾姿勢になる。しかし、この写真だけを見ると、修学旅行の旅館でくつろいでいるようだぞ。

鮮やかな手さばき。

こうなるとプロレスのようですが、両者ともに1枚ずつ残ると、「運命札」勝負といって、自陣にある札を読まれた方が圧倒的に有利。かなり盛り上がります。

この人は避難しているわけではありません。飛ばした札を取りに行ってます。
 
(1)百人一首は当たり前だが百の短歌なので、百の札があるわけだが、恐ろしいことに、俗称「上の句」(最初の17音)は札には書いておらず、「下の句」(うしろの14音)のみが味気なく記されている。
(坊主やお姫様の絵はついていない、ということね)

(2)百枚の札のうち、任意の50枚が選ばれ、対戦する二人がそれぞれ25枚ずつを取り、自分の前に並べる。

(どうやら、3段に並べるようである。ちなみに、50枚しか並べられていないので、残り50枚はスカ[正式名称・空札(からふだ)]となり、どの歌が並べられていて、どの歌が空札になっているかを覚えておく必要がある。おっと、その前に歌を全部覚えているのが前提だ。)

(3)審判(?)が『これから15分間暗記』という号令をかける。ここから選手は瞑想状態に入り、寺で修行する僧の如くになる。

(4)『2分前』の合図と同時に、それまで開け放してあった窓は全部締め切られる。あらゆる音を遮断するためなのであるが、ハッキリ言ってクソ暑い。
(真夏に行われる総文祭でもエアコンは入れないのだろうか?)

 で、選手たちは急に畳を叩き始める。目を閉じて聞いていると、間違いなく柔道の受身の練習をしていると思うはずだ。これを専門用語で“素振り”と呼ぶらしい。中には「ハッ」とか「サッ」とか「オシ」(「ヨシ」かもしらん)とかいった“気合”を入れているモノもいる。

 こうなると、最早文化部なのか運動部なのかわからない。


(5)『始めます』の声が掛かると、一気に集中力は研ぎ澄まされ、会場は水を打ったような静けさになる。

(私(管理人)は「もし、この静けさの中で屁をこいてしまったら、皆どんな反応をするんだろう」などとちょっと不謹慎なことを考えていたのを告白する)

(6)あとは、札を取ってゆき、自分の陣地に並んだものがなくなった方が勝者となる。ちなみに、相手の陣地から札を取ったら、自分の陣地から好きな札を相手の陣地に置ける。お手つき(これも専門用語らしい)すると、相手の陣地から自分の陣地へ1枚札を置かれてしまう。


 本日は、神奈川県の代表選手8名を決定する大会で、各人が4回戦って(午前・午後各2戦)、その戦績が物を言う。但し、選手には格付けというものがあって、初段・二段といった段持ちから、白帯(とは言わないんだろうが)の素人までが出場しているので、単純に勝ち数だけでは決まらない。特に最後の7〜8人目を決定するのは毎年難業になっているとのこと。

 組合せは神奈川県高校文化連盟かるた専門部の先生方が苦心して決めているらしく、もしかすると来年からはスッキリとトーナメント方式にするかもしれないと伺った。

 さて、試合が始まると、「上の句」の最初の1音で全選手が反応する。暢気に撮影していると、札がバシャバシャ飛んでくる。

 かるた専門部の伊藤松男先生(西湘高校)によれば「“あ”で始まる札は16枚、“い”で始まるものは3枚といった具合に、彼らの頭の中には入っていて、置かれている札の中に“あ”は何枚か、“あ”のうちどの札があってどの札がないか、といったことを最初にチェックして、1枚札がなくなるたびに新しい情報をインプットし直している。」のだそうだ。

 侮れん。

 かるたとは、突き詰めてゆくと、条件反射と記憶装置の新情報獲得能力の勝負だということになる。集中力が求められるわけだ。

 で、中盤戦あたりになってくると、対戦相手との“口論”(という表現が適切かどうかはわかりかねるが)が聞かれるようになる。

 これは、読まれた札をどっちが先に触れたか(写真を見てもらえればわかるが、札の上からベシャッと押えて取るなどということは実際には不可能であり、手で札を「払う」ことになる)で、お互いの主張が違う場合に起こる。

 各組に審判員がついているわけではないので、セルフジャッジメントを求められるのだが、基本は「譲り合い」の精神なのだそうだ。

 じゃ、ナンデ口論が起こるのか、という疑問は勿論残るのだが、誰しも瞬間的には「自分が取った」と思うわけなんだろうね。

 あんまりひどい場合には、審判員が両者の話を聞き、客観的な判断を下し、それに従うことになる。阪神タイガースの星野仙一監督などにはあまり向かないわな。

 かるたは“性善説”に基づいて行われるのだよ。

 私、思いますに、かるたは純日本的な精神の継承に役立つほか、古典の勉強にもなり、集中力を養え、性善説に基づく謙譲の美徳を獲得することにも繋がる、かと。しかも、競技性・ゲーム性があって、十分楽しめる。

 失礼ながら、これほど熱気を帯び(窓を閉めたせいではないと思います)面白いものだとは思ってもみませんでした。私もまず歌を覚えて、小学校低学年の子たちと戦ってみる所存です。負けそうになっても「譲り合いの精神」で堪え、人間性を磨こうと思います。

 ...でも、やっぱり“坊主めくり”も捨て難いですよね?
(誰に同意を求めているのだろう)


  ←競技かるたなど、やったこともなければ見たこともない、というビギナーのために、「こんなふうにして札を取るのだよ」という例をお見せします。なかなか凄まじいものがあります。

←好評につき、スローモーションバージョンも作成してみました。よほど暇な人はちょっと見てみましょう。ご覧頂いたからといって、上手になるという保証は致しかねますのでご了承を。

★☆★☆西湘高校主将にインタビュー★☆★☆
 

インタビューに応える永岡くん
 昼休み、西湘高校かるた部主将で13名の部員をまとめる永岡真一くんにインタビューさせてもらった。彼は、昨年も神奈川代表として総文祭に参加した強者で、2段である。
(私にその価値がどれほど理解できているか、ということにはあまり触れないでね)

管理人「こんなこと聞いていいのかどうかわからないけど、何でまた競技かるた部に入ろうと思ったの?」
永岡くん「何となくです(の割にはキッパリ)。中学時代は剣道をやっていたのですが、うちの学校、あまり剣道部が強くなくて。」

管理人「じゃ、高校に入ってから始めたわけだ。」
永岡君「そうです。地域のかるた会などでやっている人もいますが、僕は部活だけですね。」

 

管理人「百人一首は当然全部暗記しているわけだろうけど、それが勉強に役立ったことはあったかな?」
永岡くん「古典の試験で百人一首が範囲になった時は勿論ですが、係り結び(話に高級感がありますなぁ)などは体で理解してますから、得ですね。」

管理人「競技かるたの面白さって、何だろうね。」
永岡くん「メンタル面で強くないと勝てないところですかね。負けていても、そこから盛り返すプラスイメージを持っていれば、勝てることもあります。」

管理人「新入部員の勧誘にはどんなフレーズを使っているのかな?」
永岡くん「勉強に役立つ、集中力がアップする、といったことのほかに『畳は和むよ』とか言いますね。あと、他の学校では『近江神宮大会でタダで京都に行けちゃうよ』とかいう手を使っていると聞いています。」

管理人「では、最後に、総文祭福井大会に向けての抱負を。」
永岡くん「去年は初戦で、優勝した福井とやって負けてから、気合が空回りして連敗したので、これまでの神奈川の最高順位である3位以上を目指したいと思います。」
管理人「どうもありがとう。午後の部、そして総文祭本番、頑張って下さい。」

◇総文祭福井大会小倉百人一首かるた部門 神奈川県代表が以下のように決定されました◇

1 川原 太郎 (慶應義塾高校1年)
2 稲葉 遼一 (県立西湘高校3年)
3 永岡 真一 (県立西湘高校3年)
4 伊藤 海彦 (県立平塚江南高校2年)
5 新井 友之 (県立藤沢西高校2年)
6 森 亮太郎 (県立藤沢西高校2年)
7 西 奈津子 (法政大学女子高校3年) 
8 菊地 伸行 (県立横浜平沼高校1年)
   以上8名 (学校別五十音順 敬称略)

 代表に選ばれた皆さん、福井での健闘を祈ります!頑張ってきてね。

平成15年度 神奈川県高等学校文化連盟かるた専門部 行事予定表
※出場資格・参加費・申込方法その他の詳細につきましては各連絡先でご確認下さい
大会名
種別
実施日
会場
連絡先
第16回神奈川県高校小倉百人一首かるた選手権 兼 第25回全国高校小倉百人一首かるた選手権県予選
団体
6/8(日)
小田原市民会館 秦野高校瀬戸先生
0463-77-1422
第35回神奈川県かるた大会
個人
7/20(日)
海老名市立総合福祉会館 西湘高校伊藤先生
0465-47-2171
第25回全国高校小倉百人一首かるた選手権
団体
7/26(土)
近江勧学館
(近江神宮内)
西湘高校伊藤先生
0465-47-2171
第27回全国高校総文祭福井大会
団体
8/8(金)
〜10(日)
ハートピア春江 西湘高校伊藤先生
0465-47-2171
第10回神奈川県高校小倉百人一首かるた秋季大会 兼 関東地区大会予選
団体
11/8(土)
県立湘南高校 藤沢西高校岩瀬先生
0466-87-2150
第6回神奈川県かるた選手権大会
個人
11/23(日)
伊勢原市総合運動公園柔道場 西湘高校伊藤先生
0465-47-2171
第10回関東地区高校小倉百人一首かるた秋季大会
団体
11/29(土)
大國魂神社 西湘高校伊藤先生
0465-47-2171
第15回神奈川県高等学校かるた大会
神奈川県高校総合文化祭行事
個人
12/21(日)
建長寺 秦野高校瀬戸先生
0463-77-1422
第7回神奈川県団体対抗かるた大会
団体
3/21(日)
神奈川県立武道館 西湘高校伊藤先生
0465-47-2171

=第16回神奈川県高校小倉百人一首かるた選手権 兼 第25回全国高校小倉百人一首かるた選手権県予選
◇結果のお知らせ◇
 
 さる6月8日(日)、小田原市民会館にて行われた標記大会(通称「近江神宮大会」)団体戦の結果が判明しましたので、お伝えしておきます。

<優勝> 県立西湘高校 <準優勝>県立藤沢西高校 <3位>県立平沼高校

 西湘は藤沢西の9連覇を阻み、全国大会への切符を手にしました。おめでとうございます。大会での活躍を祈っています。