03年度各高校吹奏楽部訪問記 ◇TOPページに戻る
第27回茅ヶ崎高校定期演奏会(4/3)
第24回北陵高校定期演奏会(3/28) ◇第22回鶴嶺高校定期演奏会(3/27)
第5回寒川高校定期演奏会(3/21) ◇第2回西浜高校合同演奏会(2/15)

 いよいよ春の訪れが近くなってきました。「部活.ネット」では、昨年に続き、2004年も「吹奏楽特集」を組んでゆくこととなりました。

 著作権の関係で、音を流せないのはひじょうに残念ではありますが、雰囲気や各高校吹奏楽部の意気込みを伝えられたなら幸いです。

 是非、皆さん、会場へお出掛け下さい。緊張感あり、癒しあり、涙あり。各高校が懸命に工夫してステージを盛り上げようと頑張っています。一見(一聴?)の価値アリです。

 各高校の部員の皆さん、先生方、日頃鍛えた素晴らしい音色を届けて下さることを期待してやみません。頑張って下さいね。


夏の空白を取り戻したい...。さあ、難曲への挑戦開始!
 
 茅ヶ崎高校吹奏楽部にとって、2003年の夏は思いがけず短いものとなってしまった。

 多くの高校の吹奏楽部に於いて「春の定演」と並んで『二大行事』とも言える「夏のコンクール」。茅ヶ崎高校は四年連続して東関東大会(湘南地区大会・県大会を経たのち)へ出場していたのだが、昨年は激戦の湘南地区大会でまさかの敗退を喫してしまったのだ。

 継続する、ということの重圧や難しさを部員たちも身をもって知ったことであろうし、だからこそ、この定演では『挑戦』をテーマとして、新たなる伝統の1ページを刻もう、という心意気を表したのだと考える次第である。

 そして、それは第三部に於ける、プッチーニ作曲『歌劇 トゥーランドット より』という難曲へのチャレンジという形で具体的に示そうということに落ち着いたようだ。
 
 しかし、その道は限りなく困難を極めているようで、定演の数日前に、茅高へ事前取材に伺い、練習を見学させてもらったが、指揮の伊藤寛隆さんの部員への指導はかなり厳しいものであった。

 曰く「友達や家族なら今くらいの音でも“いい演奏だ”と言ってくれるかもしれないが、身も知らぬ人を感動させるのはムリだよ。」

 曰く「タクトの先ほどの穴に糸を通すくらいの集中力で厳密に演奏しなきゃ。」

 曰く「3年や5年(程度の演奏経験)では、下手なんだから、思い通りに吹けないのは当たり前。だから、弱い音でも表現できるように気をつける。」

 曰く「音の奏で方による会話をしっかりやりなさいよ。空間(距離感)に負けている。」

 叱咤はやむこともなく続く。本気対本気のぶつかり合いでは、余分な言葉は次々に削られてゆく。

 はてさて、本番はどうだったのであろうか....

  
  
 お訪ねした日は「武道場」での合奏練習。顧問の神沢先生(写真左上)は4月より大和東高校へ転任。とてもお世話になったので、残念ですが、新しい学校での活躍を祈念します。写真下段右はインタビューに応じてくれた指揮の伊藤寛隆さん。

定演前に部長さんと企画長に聞きました
 
 部長は福井慶介くん、企画長は平野華さん(いずれも新3年)。合奏練習の合間に、ちょっとだけお話しを伺いました。

Q:この定演に対してどういう姿勢で臨まれていますか?
福井:定演にこの1年間の想いが詰まっています。聴きに来てくれた人に「茅高の吹奏楽はやるじゃないか」と思ってもらえる演奏にしたいですね。
平野:『挑戦』というテーマでやっているので、私たちの挑戦がお客さんにとって『感動』になるような演奏をしたいです。

Q:昨年のコンクールでの結果は部員たちに影響を与えたでしょうか?
福井:そうですね。特に沈んではいなかったは思いますが、気持ちは空回りしていたと言うか。でも、それがきっかけで結束力も上がったとも思います。さらに、秋のアンサンブルコンテストで出場した全チームが金賞をもらって、そこから立ち直ってきたと思います。
平野:それが今回のテーマにもなりました。特に第三部の「ディオニソスの祭り」に臨む姿勢が出来てきました。

Q:指揮者の伊藤寛隆さんに対してはどういう印象を抱いていますか?

福井:そうですね...。いろいろと体験談をしてくれたり、身近な存在に感じます。
平野:すごく苦労されていて、努力を惜しまない人、と思います。オーラを感じますね。

Q:他の学校の定演は参考にしたりするものですか?
福井:それほど意識はしないですが、とにかく刺激の強いものをやりたいとは思います。第二部の演出は3年くらい前から激しいものになりましたね。

 どうやら、演奏に対しても、演出に対しても葛藤を経て、聴衆に「感動」を伝えたい、という想いが強いようです。こりゃ、本番が楽しみです。
 

  
    
第一部はOGでクラリネット奏者の内川裕子さん(写真下段左)が指揮する曲も。「ラフーン」では、茅高OGの武藤宏美さん、そのご友人の岩崎拓哉さん(コントラバスクラリネット)と横田和美さん(ハープ)も出演。

 
   
  
茅高定演第二部は「ポップスステージ」と銘打たれた、メチャメチャ明るいもの。もはや、踊るなどというのは当たり前。音楽と音楽以外のものをいかにコラボレートさせるか、という試みで、他校の定演では見られないものだ。

 茅ヶ崎高校吹奏楽部の定演は、同じ市内の他校とは明らかに色が違うものであった。

 西浜高校に始まった、この春の定演シリーズ(?)全5校を全て見て聴いた、という人が私(管理人)以外にどれほどいるのかはわからないが、音楽ならではの「縦の繋がり」を最も意識していたのが、間違いなく、この茅ヶ崎高校であろう。

 指揮者・司会者・ゲストプレーヤーといった舞台に上がる人たちが全て茅高吹奏楽部OBであるばかりでなく、裏方に回る人たちのほとんどが、やはり茅高吹奏楽部OBなのである。

 また、演奏だけにとらわれず、何かしらのプラスアルファを求める姿勢(特に第二部)は、他校にはないユニークなものであるとも言える。

 こういった演出は、ある程度の部員数と伝統がなければ出来ないことであるが、北陵高校のように、部員数は多くても、演奏のみに徹する学校もあることを考えれば、もはや「部としての哲学の違い」と言うほかあるまい。
(どちらがよい・悪い、という問題ではない、という意味です)

 さらに、昨年夏の悔しさを経験している部員たちにとって、『挑戦』ともなった第三部では、難曲(事前取材では指揮者の伊藤さんが「彼らには到底吹ける曲ではない」と仰っていた)に、まさしく挑み、素晴らしいダイナミックスで演奏した。

 私が思うに、茅高では、伊藤寛隆という『自らも成長し続けるカリスマ』が磁石のような存在となって、現役部員・OBを吸い寄せており、いつのまにか、それが「伝統」となっている、ということである。

 それは、茅高OBの吹奏楽団が伊藤氏に師事し、彼の薫陶を受け続けていることからも窺える。

 伊藤氏は教員という立場ではなく、あくまで嘱託なのであるが、生徒たちの技量や性格も把握して指導していることが大きいのであろう。公立高校の場合、どうしても顧問の先生が異動になるのは避けられないことであるが、嘱託の指導者であれば、ずっと継続して教えられる、という利点を生かした運営だと言える。
(実際、伊藤氏は20年に亘り茅高の指導をしている)

 この定演を聴いて、部活動のありようは、その部・その時代により多彩であっていい、と感じた。

 当たり前だ、と思ってはならない。頭の中で分かっている、ということではなく、「体感した」という点が重要なのだ。

 今後とも、茅ヶ崎高校吹奏楽部の存在が他校への影響を与えることで、より一層、湘南地区の吹奏楽が面白いものになってゆくことを期待してやまない。

茅ヶ崎高校吹奏楽部第27回定期演奏会プログラム
T部
 序曲「キャンディード」 L.バーンスタイン
 イーストコーストの風景 N.ヘス
 ラフーン 〜ジェインムズ・ジョイスの詩による〜 A.リード
  クラリネットとバンドの為のラプソディ

U部
 ポップスステージ in 2004

V部
 ディオニソスの祭り F.シュミット
 歌劇「トゥーランドット」より G.プッチーニ


生まれ変わっても、またHWEで...
 
 
 澱みなく。

 北陵ウインドアンサンブル(以下、HWE)の定期演奏会を、もし一語で表現するとしたら、これだろう。

 まず、進行自体が最初から余分なものを削ぎ落としてある。必要最低限のMCと演奏。表現を悪くすれば、「それだけしかない」とも言えるが、HWEの強さはそこにあると考える次第である。

 個人にせよ、組織にせよ、世の中に向けて何かを発信しようとする際、必ずと言っていいほど“カオス”(混沌)のプロセスがあり、「あれもやろう、これもしたい」と、おもちゃ箱を引っくり返したような状態になることもしばしばである。

 HWEの定演は、そのカオス期を脱却し、HWEが奏でる音楽を堪能できるための環境がきちんと整えられており、聴衆もある種の緊張感の中で、それを聴くことを求められる。しかもそれが心地よい、と言えばよかろうか。

 昨年の定演での演奏も素晴らしかったが、今年はさらにそれを凌駕するものであったと、私(管理人)は断言する。

 アレクセイ・トカレフ氏(詳しくはこちらへ)という世界を股にかけて活躍してきたトランペッターをゲストに招き、そのトカレフ氏をして「彼らと演奏するのはプレッシャーが大きい」と言わしめる迫力。何度も積み重ねた練習によって実現された、そのダイナミックレンジの広さ。
(リハーサル時に設定していた録音レベルでは、本番はリミッターを振り切るほどだったらしい。これは心理学で言うところの「観客効果」であり、部員たちのアドレナリンがほとばしった結果なのかと想像する)

 どんな部活にも、また、その指導者にも、何がしかの哲学はあろう。しかし、これまでに私が見聞きしてきた試合・発表会といった類の場で、それをこのレベルで体現したものは皆無であったろう。
(誉めすぎ、ということはないと思う)

 私などは、今回ほどの精度の高さで定演をやってしまうと、次回以降は、今回のものが基準となってしまうため、指揮の丸山透先生にも、部員たちにも猛烈なプレッシャーが掛かるのでは?と、心配にすらなってしまう。

 最後に丸山先生がステージ上から語った言葉も、ひどく印象的であった。

 「生まれ変わったとしても、また、HWEに入って、あの下手くそな丸山の指揮のもとで演奏したいと、部員たちに思ってもらえるような部活であり続けたいと思います」

 ちょっと痺れますね。

 先生方、ゲストのトカレフさん、客演指揮の橘田先生・三浦先生、特別出演の村松達之さん、司会の望月先生、そして部員の皆さん。大きな仕事が一つ終わりましたね。お疲れ様でした。

 最後にリクエストしてもいいですか?

 いずれ、余程興が乗ったら、ということで構わないのですが、HWEで『ボレロ』(ラベル作曲)を演奏してもらいたいなぁ、と。あれだけダイナミックレンジの広い曲を一高校の吹奏楽部が演奏したら、カッコイイですよ。
(....ムリっすか?)

[第一部]
  
  
<第一部>HWE定演開始前には、アンサンブル演奏が行われる。登場するのは昨秋の校内予選を通過した3チーム(詳しくはこちらへ)。司会は藤沢市立六会中学の望月誠先生。第一部最終曲『トランペット協奏曲』の客演指揮は藤沢市立大庭中学の橘田誠司先生。トランペットはアレクセイ・トカレフ氏。

トカレフ氏と奥様にインタビュー
副題:日本の冬はロシアより寒い?
 
  
左)ずうずうしくもトカちゃんとツーショットに収まる管理人 中)写真右側に写るこの少年こそが、トカちゃんの日本永住を決意させたのだった.... 右)奥様に通訳をお願いしてインタビューさせてもらいました
 
 心の中では、既に「トカちゃん」と呼んでいる、アレクセイ・トカレフ氏。
(と言っても、まだ2回とかお会いしたことはありませんが...)

 定演前に、北陵高校でのリハーサルを聴きに行かせてもらい、さらにはインタビューにも応じて下さったトカちゃん。そして、この「部活.ネット」の記事を読んで、快くインタビューに加わって頂いた奥様の明子さん(英語・ロシア語の同時通訳!)。ご協力に感謝します。
(で、このインタビューの際、ロシア語の通常スピードに於ける会話で、私が聞き取れた単語が1つもなかったことは、ここに正直に告白するものである!)

Q:トカレフさんと明子さんが知り合ったのは、1997年のレニングラード・フィルハーモニー交響楽団で明子さんが通訳を務められたことがきっかけだとお伺いしています。しかし、トカレフさんはロシアで、明子さんは日本でそれぞれ活躍していたわけですから、結婚生活というのはなかなか難しいものがあったのではないかと想像しますが。
A:ええ。最初はロシアと日本に分かれて住んでいました。私(明子さん)が半年くらいロシアに行く、というような形でした。
Q:それが、どうして日本に拠点を移そうとお考えになったのですか?
A:実は、子供が生まれることになって、そのことを伝えたら、「それでは日本に行こう」ということになったんですね。勿論、楽団で12年トランペットを吹いていましたから、少しは迷いもあったようですが、現状のロシアというは、医者・弁護士・音楽家といった、いわゆるインテリ層の生活がひじょうに苦しいものになっていまして、そういったことも日本へ、という決断に繋がったのだと思います。トランペットを吹くだけでは生活もままならず、精神的にも疲れていましたね。
Q:確かに大きな決断ですね。いつ頃のお話ですか?
A:1999年11月のことです。主人は、ほとんど楽譜しか入っていないスーツケース1つと、ピッコロトランペット1つだけでロシアから来たんですよ。
Q:それはまた、どういうことでしょうか?
A:えんび服やトランペットといったものは、全部楽団のものだったので、持ってくることができなかったんです。
Q:まさしく、ゼロからのスタート、といった感じですね。
A:ええ。それに、初めて日本の冬を過ごした時には、「寒い寒い」と毎日言っていました。ロシアでは、家の中はセントラルヒーティングで、いつも温かいため、シャツ1枚で過ごせるのですが、日本では寒くなってから、暖房を入れるでしょ。それで、環境の変化もあって、最初の冬に7回も風邪で寝込みましたね。
Q:それは大変でしたね。ところで、そもそもトカレフさんがトランペットを吹くことになったのはどういうきっかけだったのでしょうか?
A:もともとピアノをやっていたのですが、小学生の時に、たまたま鼓笛隊のナチュラルトランペットを募集していて、そこで吹いたのを認められたのです。本人はオーボエも好きだったそうですが。
Q:世界的なオーケストラで吹いていた方が、技術的にはかなり劣ると思われる、中学生や高校生と一緒に演奏するということについて、正直に言うといかがですか?
A:中学生や高校生と一緒にやることは、実はプロの音楽家とやるよりもプレッシャーが掛かるそうです。生徒からの期待感が大きいし、見本にされていますから。それでも、自分も得るものは多いので、なるべく子供たちにいい影響を与えられるようにしています。
Q:本日のご自身の演奏とHWE全体としての演奏についてはいかがでしたか?
A:自分としてはイマイチでしたが(注:たぶん謙遜)、バンドとしてのレベルは格段に上がりました。それぞれのパートのコーチが素晴らしいと思います。
Q:部長の松本くんは、「トカレフさんのように吹けたら...」と言っていましたが、彼らについて、何かメッセージがあればお願いします。
A:若いのだから、私よりももっと上手になって、私を超えるようにしてもらいたいですね。


 演奏直後の楽屋での慌しいインタビューでしたが、トカちゃんも明子さんもこちらが恐縮するほど、丁寧に答えて下さいました。ありがとうございます。

 ちなみに、トカちゃんは、梅干し・納豆・コンニャク・きなこもちといった和食が大好きで、毎日食べているとのこと。私なんかより、ずっと日本的かもしれませんね。

 それにしても、ロシアから日本へ、そしてそこで中学生・高校生たちと一緒に演奏する、という縁を考えた時、音楽の持つ力の偉大さを思わずにいられません。

 確かに、音楽は世界を繋げるものだと再認識しました。

[第二部]
    
  
<第二部>客演指揮に藤沢市立御所見中学の三浦孝一先生を迎えての『序奏とカプリス』。そして、最終曲『ドラゴンの年』には、パーカッションの村松達之氏も参加。丸山先生の“息切れをものともしない”挨拶は昨年通り。

丸山透先生と村松達之氏にインタビュー
 


  ◇丸山先生に
Q:本日の演奏はいかがでしたか?
A:もう、これ以上の演奏はできない、という演奏でしたから、全曲よかったと思います。
Q:2週間ほど前のお話では、昨年以上の定演にしなければ負け、といった言葉もありましたが。
A:曲数は少なかったのですが、厳選しましたし、間違いなく昨年以上のものが出来たと思います。
Q:この定演を最後に卒業してゆく部員たちに対して何かひと言。
A:担任も持っていたし、関わりが深かったので、手離したくない気持ちは強いのですが...。
Q:今後のHWEの方向性はどういったものになりますか?
A:コンクールの成績云々ではなく、あの演奏をするHWEだからこそ、一緒にやりたい、中に入りたいという気持ちにさせるバンドでありたいですね。

 定演直後のお忙しい時間にお邪魔しました。お疲れ様でした。
 
◇村松達之さんに
Q:お疲れ様でした。中学生や高校生と一緒に演奏されて、どういったことを感じられるでしょうか?
A:年齢的なギャップがあるので、コミュニケーションには差がありますが、時間を掛けてやってゆくと、必ず出来るようになる。音楽は会話ですね。
Q:今回、HWEの定演に参加されて、生徒たちの変化などはあったでしょうか?
A:リズムというのは、理解度が高まるのに比例して身についてゆくので、中学生よりは高校生、さらに人間的成長とともに音色がよくなっていく、ということを感じました。そのことが一番嬉しいですね。

 ありがとうございました。もう、来年の定演が楽しみになってきますね。

定演後に寄せられた出演者側の意見・感想
 
 顧問の丸山先生から頂いたメールをそのままご紹介します。

橘田誠司先生より
「自分のバンドとはひと味もふた味も違う良い意味での心地よい緊張感の中で、演奏している生徒達とのやりとりを楽しむことができました。素晴らしい経験と勉強になりました。生徒達に心から感謝しています。どうもありがとう。」
 
三浦孝一先生より
「音楽に対する真面目でひたむきな姿勢と、周囲に対する暖かい心配りができる生徒達だからこそ、あれだけの演奏ができるのだと思います。素晴らしいコンサートでした。これからもよろしくお願いします。」
 
アレクセイ・トカレフさんより
「皆さんの心のこもった演奏は、本当に素晴らしかったです。北陵ウインドアンサンブルと共演できたことは、私にとって大きな喜びと誇りです!また一緒に楽しく音楽をしましょう。その時を心から楽しみにしています。」
 
村松達之さんより
「演奏の中味もさることながら、こういったコンサートをリハーサルから終演まで時間通りに整然と進行させるのは、並大抵のことではありません。お客様はもちろん、共演者から裏方さんに至るまで、全ての人たちをすっきりした気持ちにさせてくれる素晴らしいコンサートでした。」
 
丸山透先生より
「担任として関わった38期生が卒業し、4月には41期生が入学してまいります。毎日一緒に勉強し、毎日一緒に練習し、悔しがったり喜んだり泣いたり笑ったり(時にはケンカしたり)、それでも一生の心の宝物になるような部活動でありたいと思います。ご来場いただきました皆様に、あらためて御礼申し上げます。これからもご指導とご協力をよろしくお願いいたします。」

 
  
 演奏終了後は、出口でお客さんを見送るのがHWE流。その後、パート別(?)の記念撮影などで盛り上がります。これで卒業してゆく一人の女の子が「もう部活ができないと思うと...」と涙していたのが印象的でした。
 

HWE第24回定期演奏会プログラム
◇第一部◇
「フローレンティナー・マーチ」 ユリウス・フチーク作曲
「アルヴァマー序曲」 ジェイムズ・バーンズ作曲
「トランペット協奏曲」 アレクサンドル・アルチュニアン作曲
 ※トランペット アレクセイ・トカレフ
 
◇第二部◇
「春の猟犬」 アルフレッド・リード作曲
「序奏とカプリス」 チャールズ・カーター作曲
「ドラゴンの年」 フィリップ・スパーク作曲
 ※パーカッション 村松達之
 


※まゆ・・・「部活.ネット」立ち上げ当初より、なぜか特派員を希望。茅ヶ崎高校をこの3月無事卒業。めでたく東海大学健康科学部への入学が決まっている。久しぶりの登場。
 
少ない部員数だからこそ、出来ることもある
 
 部員数21人。吹奏楽部としてはやや少ないようにも思える。しかしそれを、部長の山内さんは長所ととらえる。

  「部活の人全員と仲良くなれる。顧問の堀内先生も自分たちなりの部活を作らせてくれるので、チームワークはすごい。」

 その言葉通り、楽屋にあいさつに行くと本番前にも関わらずみんな楽しそうに談笑している。その後、受付の写真を撮っていると、山内さんがあらわれてパンフレット配りの係を手伝いはじめた。本番30分前切ってるのに!・・・山内さん達は、「最後まで聴いていってくださいね〜」とステージに消えていった。

 そんななごやかムードも、ステージ上ではびしりと締まった。

  「クラシック・ステージ」と名づけられた第一部では、顧問の堀内先生の指揮で三曲を演奏。「有名で誰もが口ずさめる、けれど演奏してみると難しい、そんな経験ができる曲ばかり。」と堀内先生が語った通り、「威風堂々」はCMでも使われていて私でも知っていた。しかし生で聴くと大迫力!指揮者からステージ最後尾の打楽器まで、はりめぐらされた糸のような緊張感が伝わってくる。特に私は最前列にいたので、ビリビリと音のふるえまで伝わってきた。

 続く「プスタ」は四つのパート、「くるみ割り人形」は八つの小曲から成っている曲だが、どれもまったく違う印象で驚いた。繊細に音を奏でたり迫力をもって盛りあがったり。音に色があるとすれば、虹のような音色!21人という編成で、こんなに幅広い音が出せるとは・・・。

  
「クラシック・ステージ」と命名された第一部。“We are Messengers”というテーマに恥じない演奏だった。

 第二部「ポップス・ステージ」の「サンバ・オープニング」。このオープニングのパート別紹介は、鶴高独自のもので必見だと聞いていた。「我等 帆瑠(ホルン)」「我等 不流飛(フルート)」などとパート名が書かれた手作りのTシャツを着て、パートごとにステージに入ってくる。もちろん、演奏しながら、回りながら、踊りながら!

  1パート増えるごとにステージが埋まり、ラストに「我等 鶴嶺」のTシャツを着た堀内先生が登場した。様々なパートのひとりひとりが集まって、初めて完成する音色。それはまるで、鶴高吹奏楽を象徴するような幕開けだった。
 
←パート名の入ったおそろいのTシャツ。
  ちなみに「帆瑠」とはホルンのことらしい
 
 部員による司会をまじえながら、二曲目は「踊る大捜査線」。実は私はこの作品を観たことがないのだが(汗)、映画を観ているような展開の曲だった。彼らが奏でる音の緊張感や感動は、BGMを超えてひとつの作品として成立していた。

 続く「シングシングシング」と「パイレーツ・オブ・カリビアン」の見どころは、それぞれの学生指揮の二人。なんとお二人は姉妹なのだ!姉の山内麻奈未さんは黒スーツにハット、妹の未来子さんは海賊風のコスチュームで登場。派手なライトアップやたくさんのソロなど、趣向をこらした舞台。

 しかし、その演出よりも印象的だったのは、指揮の二人の笑顔だった。

 指揮ってがちがちに棒ふってるイメージがあるのに、二人とも楽しくてしかたない!という顔だ。実は部長の山内さんは、指揮の練習中に何度もやめたいと思ったという。「でも本番では、先頭に立ってみんなで音楽を作れるのが楽しくてしかたない!!笑顔になるのも自然と。」演奏している部員たちも笑顔を返す。こんなに楽しそうな緊張感をもったステージは観たことがない。

 そしてラストは「ライオン・キング」。ライオン・キングといえば吹奏楽の定番らしく、私も何度か聴いたことがあるが、そんな曲でも新鮮さを失わない。ディズニーの曲がもつ雄大さを虹の音色が引きだした感じ。会場が感動の拍手に包まれる中、堀内先生がマイクを持った。

 「私に一分だけ時間をください。」

 堀内先生が語ったのはパーカッションパートの部員さんの話。なんと彼女は前日の練習後入院し、点滴を打ってステージに駆けつけたという。「彼女に拍手をお願いします。」そう先生が言うと、ステージ上の部員はほとんどが泣き出し、拍手はしばらくなりやまなかった。

 部員がひとつになっていて、まるで指揮が客演のように見えました、そう正直に言うと、堀内先生は怒りもせず「それがいい。」とおっしゃった。「演奏会という生徒が表現する場に、私は協力させてもらっている。」それは、すべての部活動顧問理想のスタンスだと思った。

 アンコールを含めて全9曲。私のような素人から耳の肥えた人まで、みんなが楽しめるステージだった。

鶴高名物『パート別紹介』
  
  
  
第二部「ポップス・ステージ」は、この『パート別紹介』で始まる。他校の定演にはない、ユニークな演出で、自主運営を掲げる鶴嶺高校吹奏楽部を象徴するシーンであろう。

学生指揮・・・恐るべし!山内シスターズ
  
学生指揮は、基本的には立候補によるらしい。しかし、当然のことながら部員からの信頼がなければ成立しないので、間違いなく大変なポジションである。今年は部長の山内麻奈未さん(新3年=写真左)とその妹の未来子さん(新2年=写真中)が担当。写真右はインタビューに応えてくれた麻奈未さん。

実は定演前に一度お邪魔してきました
 

左が部長の山内麻奈未さん、右が副部長の小川葉子さん
   鶴嶺高校吹奏楽部は昨年夏の湘南地区吹奏楽コンクールで金賞を受賞。さらに、秋に行われたアンサンブルコンテストでは1年生だけの編成(2年生が修学旅行中のため)によるフルート三重奏で金賞を獲得し、県大会へ出場した。

 そうした一連の実績は部員たちの自信にもなったであろうし、さらなる向上心を生んだことであろう。

 文化祭で訪ねた時にも「これからは定演に向けて仕上げていきます」という力強い言葉もあった。
 
 部長の山内さんは鶴嶺高校に進学する際、相当な迷いもあったようだ。というのも、当時(2年ほど前)、この地域では茅ヶ崎高校・北陵高校の2校の吹奏楽部が技術的には抜けた存在だったため、いずれかに進みたいという気持ちも強かったからである。

 お母様より「あなたが鶴嶺に行って、吹奏楽部を力強いものにすればいいじゃない」というアドバイスを受け、鶴嶺高校への進学を決意。

 今は「鶴嶺にしてよかった。大人数だと作れない絆が出来たし、自主的な運営が可能だから、いろいろな発想も浮かぶ」とのことだ。

 副部長の小川さんは、中学時代に吹奏楽の経験がない。ナント、剣道部だったそうだ。トロンボーンを吹いているうちに綺麗な音が出るようになって、そのまましっかり部員になった。

 お二人に「鶴高吹奏楽部定演の特色」を語ってもらった。

(1)We are Messengers
 今回のテーマである。この言葉の中に「少人数であっても、ここまで出来る」というメッセージも込めている。

(2)特殊な演出はない
 何か凝ったことをやろうにも、演出に人を回せない。司会も現役生がやり、パートごとのTシャツを作って、パート別紹介をユニークにやるということくらい。必然的に曲に集中して、できるだけよい演奏を聴いてもらうという方向に。

(3)OBにも参加してもらう
 伝統、と言えば伝統だが、唯一、現役部員とOBとが合奏できるチャンスなので。社会人の人もいるので、土日にも練習する。

 言葉にすれば、以上のようであるが、そこに行き着くまでには様々な葛藤もあったはずだ。シンプルに、且つ、スキルも上げて、というのは高校生にとっては思っているほどには容易ではない。

 しかし、7時半からの朝練や定期テスト前の自主練習に多くの部員が参加する、といった姿勢ができるようになり、気運上昇中であることは、十分に察せられた。

 実際の定演では予期せぬアクシデント(パーカッションの部員が前日に入院)を乗り越え、見事な演奏をしてくれた。彼女たちの頑張りをこれからも見守りたいと思う。
 
  
定演10日ほど前のリハーサル風景。指揮が部長とその妹さん(未来子さん=新2年)だと聞いてビックリ。

鶴嶺高校吹奏楽部第22回定期演奏会プログラム
◇第一部:クラシック・ステージ◇
威風堂々
プスタ
くるみ割り人形

◇第二部:ポップス・ステージ◇
サンバ・オープニング
踊る大捜査線
シングシングシング
パイレーツ・オブ・カリビアン
ライオンキング


コンクールは「技」、定演は「心」
 
 「部活.ネット」でも何度か報道したことであるが、2003年度は寒川高校吹奏楽部にとって、画期的な1年となった。

 それは、昨夏の湘南地区吹奏楽コンクールB部門(35名以下の編成)で金賞を受賞し、県大会への出場を果たしたことである。

 コンクールに於いては、勿論、演奏技術が問われるので、狙って県大会への出場権を得たことは、彼らにとってたいへんな自信にもなったようだ。寒川高校で指揮を執る岡田寛昭さんも、「あれから劇的に変わりましたよ」と仰っている。

 さらに、今回の定演は、初の文化会館大ホールでの演奏となった。これも画期的だと言えるだろう。

 確実にステージを上がってゆく寒川高校吹奏楽部。部員が6名しかおらず、コンクールへの出場も危ぶまれた6年前の夏を知っている顧問の先生方や指揮の岡田さんにとっては(勿論、部員にとっても)感慨深いものがあったに違いあるまい。

 テーマは「心」。

 どのくらい「心」なのかと言えば、プログラムに収録された部員たちの寄せ書きの中に

 “一符入魂”

 という言葉もあるほど「心」なわけだ。

 なるほど、音楽は「心」ですね。指揮の岡田さんも「コンクールは技ですが、定演は心」と、インタビューに答えてくれました。

第一部
  
  
舞台のつり看板は指揮者・岡田寛昭さんの恩師、岩島先生の書によるものだそうです。司会は顧問の相川真由美先生
 
 先に謝っておくと、実はこれほど胸を打たれるとは思ってもみなかった。

 「制服を着ての演奏は最後なので一瞬一瞬を大事にしたい」という前部長・天野裕貴さん(3年)の言葉が、戯言ではなかったということが十分に伝わる演奏であった。

 私(管理人)は、「部活.ネット」で個人を誉めることは控えるようにしているが、フルートの猿橋江利香さん(3年)の安定感のある、それでいてキレのよい音色は称賛せずにはいられない。

 プログラムで後輩たちが彼女の音色に癒される、ということを書いていたが、私も随分と癒され、かつ、背中が痺れるような感覚になった。

 勿論、その技量がどいうったレベルにあるのかは、分かりかねるし、寒川高校吹奏楽部全体の中でこそ、うまく溶け込んでいたのかもしれないが、私は評論家ではないので、素直に感動してしまった。できれば、これからも吹き続けてもらいたいなぁ。
(もし、この記事を読んだら、きっとそうしてくれるものと信じています)

第二部〜第三部
  
左)司会は学生に交替 中)印象的だったルロイ・アンダーソン作曲の「タイプライター」 右)西浜中学との合同演奏
  
左)鈴木清校長挨拶 中)ステージ上で後輩から3年生に花束と一人一人への言葉が贈られた 右)演奏終了
 
 2部ではお揃いのTシャツに着替え、リズム感のある曲を演奏してくれた。個人的には「タイプライター」という曲がひどく気に入ってしまった。何度か聴いたことのある曲だったのだが、タイトルを知る由もなく、彼らの演奏で初めてわかった。
(実は、今もこの曲が脳内を駆け巡っている)

 また、西浜中学との合同演奏は、吹奏楽ならではの「縦横無尽のつながり」が表されたもので、中学生・高校生両者にとってよい経験となろう。

 こういったスタイルで年齢に関係なく、また、ある程度の技術があれば何人でもステージに上がれる、というのは部活動という枠組みのなかでは、吹奏楽にのみ可能なことで、大変かと想像はするが、是非継続してもらいたい。

 第3部の最初に、卒業してゆく3年生をステージ上で後輩たちがねぎらうシーンがあった。私がこういった場面にほぼ無条件に弱い、ということを知っての演出であろうか。3年生は6名であったが、泣いていない者はなく、その後に続く演奏に支障をきたすのでは、と心配するほどであった。

 そして、それぞれが、それぞれの想いを最終曲「アルメニアン・ダンス パートU」に込めて、演奏は終了した。
(ちなみに、アンコール曲が会場撤収時間が近づいたため、「超早回しバージョン」で演奏されたのは、ちょっとしたアクシデントとして部員たちの思い出に残ることだろう)

   
左)2004年の予定表。「全国大会」の文字が... 右)西浜中学の部員も加えての集合写真

部長にインタビュー
 
 現部長は2年の吉川(きちかわ)茜さん。ステージでの言動から、天然キャラと見ました。
(違ってたらゴメンね)

Q:今日の定演の出来はどうでしたか?
A:日頃の成果が出せたと思います。
Q:曲数も多く、難しいものもあったかと思いますが。
A:そうですね。特に第三部は新たなチャレンジで不安もありました。
Q:その第三部の最初に、卒業生への「贈る言葉」がありましたが、ああいった演出というのは、1・2年生でこっそり考えるものなのですか?
A:そうですね。例年もあるのですが、一人一人に対して言葉を贈るのは、たぶん初めてじゃないでしょうか。
Q:3年生は6名だけでしたが、彼女たちが抜けるということで不安はありますか?
A:どのパートでもしっかりリーダーとしてやってくれていましたし、その背中を見ながら私たちもやってきましたから、不安はものすごくあります。
Q:特に部長としては?
A:前部長の天野さんは、まとめる力がとてもあったので、同じように出来るかはわかりません。でも、私は私なりに自分のオリジナリティを出して、やってゆこうと思います。
Q:そのオリジナリティというのは、どういったことかな?
A:声がデカい、といったところでしょうか。
Q:では最後に、2004年度の目標を。
A:コンクール県大会で金賞、そして関東大会出場です!

 力強い。これで今年の寒高吹奏楽部も大丈夫でしょう。また、コンクール前に取材に伺いますね!

顧問を代表して相川先生にインタビュー
 
  Q:どうでしたか、今年の定演は?
A:これまで4回は小ホールでやってきたのですが、ちょっと勝手が違って、こちらも戸惑いながらでした。でも、いい演奏会になったと思います。
Q:卒業してゆく3年生への想いはいかがなものでしょう?
A:彼女たちは本当によく練習していましたから、卒業してゆくことが嬉しいような淋しいような気持ちですね。ステージ裏で、顧問の先生たちが皆、ちょっとウルウルしてしまいました。
Q:現1・2年生たちへのメッセージをお願いします。
A:もっともっと成長して欲しいですね。頑張った分、必ずそれが報われるし、そのことで成長できると期待しています。

 ご協力ありがとうございました。

指揮者・岡田寛昭さんにインタビュー
 
Q:お疲れ様でした。今回はどういったことを目標として臨まれましたか?
A:テーマとしては「心」ということでしたが、集中力と勢いというものを大切にしようかと。うまく集中してやれたものもあったと思います。
Q:コンクールで県大会へ出場したことで、部員たちに何らかの影響はありましたか?
A:劇的に変わりましたね。まず、自分たちの技術に対する自信を持てるようになって、自分の音楽が以前にも増して好きになった、ということが最大の変化です。
Q:3年生に対してステージ上で、ある意味の卒業式を行ったわけですが、あの演出は生徒たちと考えるわけですか?
A:そうなんですが、今年はあれで3年生が皆泣き出してしまって、呼吸も乱れたので、来年はアンコールの前にする方がいいですかね?
(と、私に聞かれても、ちょっと困りますが...)
 やはり、楽器を演奏する時は、精神状態が出ますからね。
Q:3年生が抜けて、1・2年生が主体となりますが、今後はどういった方針で運営される予定ですか?
A:3年生は数は少なかったのですが、皆、しっかりと演奏する子たちでしたから、その穴は大きいですよ。ただ、残る子たちも、その背中を見てやってきていますから、それほど心配もないと思います。卒業生たちの姿勢を見習って、継承してくれるでしょう。

 どうもご協力ありがとうございました。また、お邪魔します!
 
<管理人より>
 定演後、岡田さんからメールを頂きました。ありがとうございます。で、そのメールには「吹奏楽の問題点」(と言うほど大袈裟でもねえか)が記されていました。それについては、茅ヶ崎学区の全校の定演終了後に、私見も交えてお伝えしたいと思います。
(おっ、ナンカいわくありげだ....)

寒川高校吹奏楽部第5回定期演奏会プログラム
◇T部◇
マーチ「ベストフレンド」 松浦伸吾作曲
「ラッシュモア」 A.リード作曲
ガリバー旅行記 B.アッペルモント作曲
◇U部◇
「そりすべり」
「シンコペイティッド クロック」
「タイプライター」  L.アンターソン作曲
アニメ・メドレー「久石 譲」作品集 森田一浩編曲
リトル・マーメイド
 ※西浜中学による演奏
◇V部◇
「アルメニアンダンス パート2」 A.リード


さらに部員増殖中...そろそろ結果も欲しい?
 
 ほとんどの高校が『定期演奏会』と称しているのに対し、西浜高校だけは『合同演奏会』というタイトルがついている。これにはいくつかの事情があるので、まずそれを記しておこう。

 現・顧問の渡邊良子先生が西浜に赴任されて2年。部員数も少なく、ハッキリ言って現役生単独での演奏会を開くことが難しい状況の中、西浜吹奏楽部OB・OGの有志で作られた「西浜吹奏楽団」とのジョイントによる演奏会を開いて、現役部員は勿論、OB・OGにとっても貴重な演奏の場を確保することとなったわけなのである。

笑顔・笑顔の渡邊先生(演奏前)
 
 他校に先駆けて、2月15日(日)に行われた第二回合同演奏会には、そうした裏話(?)もある。数年前まではコンクールにも出場できないほどに部員が枯渇していた時代があり、それを思えば、これからの西浜高校吹奏楽部には大きな期待が持てるのではなかろうか。

 勿論、その鍵を握るのは間違いなく、渡邊先生であり、担任である1年生を中心に、部員集めにも奔走している。やはり、ある程度厚みのある音を出そうとすれば、部員数は少ないより多い方がよい。
(昨夏、訪問した際は、1年生が12名だったところ、現在は14名にまで増加)

 開演前のお忙しいところ、渡邊先生にいくつか質問してみた。

Q:今日の演奏会での目標はどういったところでしょうか?
A:まず楽しく演奏することですね。それと、楽曲の目論見というか、作曲者の意図を外さないようにしたいです。お客さんに申し訳ないような演奏にならないよう、頑張ります。
Q:また、部員が増えたとお伺いしましたが?
A:ええ。1年生の男の子なんですが、これが意外な拾い物でして。初心者なんですが、今日もステージに上がります。頑張っていると思いますよ。
Q:それは頼もしいですね。開演前のお忙しいところ、お邪魔しました。では、演奏の方、頑張って下さい。

 この季節、インフルエンザで倒れる部員が続出。また、先生のお子さんも具合が悪くなり、演奏会直前の2日ほど、ほとんど練習に参加できない、という苦境。それでも、本番当日には全部員が顔を揃え、元気にステージへと向かった。
 
  
左)OB・OGの有志による「西浜吹奏楽団」の演奏。指揮はかつての顧問・佐藤毅史先生 中) 元気あふれる女子部員たち(演奏前) 右)本番直前、慌しいリハーサル室
         
 演奏会は、まずOB有志の「西浜吹奏楽団」の演奏に始まり、その後、現役部員たちの出番となった。
(残念なことに、今年は現役とOBとの合奏は行われなかった)

 参加者は1年生14名、2年生3名。それに、進路が決まって演奏の場へ復帰した3年生が4名。指導者3名が加わっているとは言え、劇的な音量変化を表現するには苦しい。そこで、その人数に適した新譜を探すことが指揮者・渡邊先生の腕の見せ所らしい。
 
 用意された楽曲は5つ。奇をてらったようなものはなく、演出も極めてシンプル。余計なことに気を遣うより、まず演奏、というポリシーに思われた。

 最後は渡邊先生自らが、ステージよりマイクなしで(!)ご挨拶。アンコールに楽しいマーチを演奏して終了した。

 彼らの演奏がとても上手だったかと言えば、そうではなかったかもしれない。小ホールでなく、大ホールであったため、空席が目立ったのも確かだ。

 しかし、OBの力を借りながらも、西浜独自の演奏会を昨年に続いて開いたことは明日へと繋がってゆくことであろう。どんな名プレーヤーも初めは素人であったように、着実な積み重ねが、いつしか「伝統」として継承される。それを予感させる西浜高校の『第二回合同演奏会』であった。
 
  
皆、必死の演奏。しかし、その中にも楽しさが...?
  
「マンボNo.5」では手拍子も。最終曲終了後は、部員総立ちの挨拶。

終了後のインタビュー
 

常に前向きな菊池前部長
   前部長の菊池真理子さん(3年)は短大への進学が決まり、部活に復帰。3月26日(金)に行われる“Spring Concert”にも出演するとのこと。

Q:今日の演奏はどうだったかな?
A:まずまずよかったと思います。
Q:新部長の内藤愛美さん(2年)は前部長から見ていてどうですか?
A:まじめで練習熱心なので、いい手本になってくれると思います。
Q:2年生が3名しかいなくて心配はない?
A:その分1年生がたくさんいるので大丈夫です。
Q:今後も活動は続けるの?
A:ええ。まず、Spring Concertに西浜高校として出るほか、出身の鶴が台中学の方にも出ます。
Q:そうですか。じゃあ、学生生活も頑張って下さいね。

 1年生・長谷山晴彦くんは、以前訪問させてもらった時に『男子部員増殖計画』なるものを企んでいると言っていた。

Q:どうやら1人増えたみたいだね。
A:ええ、何とか。でも、まだ増やしたいです。
Q:今日の演奏会はどうだった?
A:OBさんとのジョイントというのは初めてだったのでかなり緊張しました。
Q:これからの目標を教えてくれますか?
A:まず卒業式のBGMとSpring Concertですね。そのあと、もしかしたら大岡祭に出るかもしれません。

増殖成功の長谷山くん。今度は掃除?
Q:君から見て、今、西浜高校吹奏楽部で最も必要なことは何でしょう?
A:ぶ....部室の掃除かと.......。
Q:そ....そうですか.......。



相変わらずオチャメな渡邊先生
すっかり押され気味の管理人
   演奏会終了後、再度、渡邊先生にいくつか聞いてみた。

Q:今日の出来はいかがでしたか?
A:練習で失敗するところは本番でもやっぱり失敗してしまいましたねぇ。途中で1拍止まっちゃったの、わかりました?
Q:いえ。言われなければ気づきませんでしたよ。「あうんの呼吸」というやつで乗り切ったということでしょうか?
A:そうですね。皆、よく止まらないで演奏してくれました。
Q:先生から部員たちに言いたいことはありますか?
A:皆、もっと「上手くなりたい」という欲を持ってもらいたいですね。今の吹奏楽部が居心地がいいのかもしれませんが、「今に満足するな」と言いたいです。
Q:今後の目標はどういったところに置かれていますか?
A:欲を言えば、そろそろコンクールである程度の結果を残したいですね。あと、もう少し自分が大らかになりたいと。
Q:えっ?まだ大らかさが足りませんか?
A:ええ。こう見えても、結構キツイところもあって。突っ走ってしまうところもありまして、生徒を周回遅れにしてしまっているようなところもあるんですね。なので、今は、生徒たちの方に向かって逆走してますよ。
Q:そうですか。4月からの新年度で3年目、生徒も全部知った顔ぶれになりますね。
A:ええ。ここからが勝負だなぁと思っています。私が西浜高校にいる存在意義のようなものも問われるかと思います。何年後かに目標を置く、というより、今いる子たちには、今しかないですから。
Q:ところで、他校のほとんどが春休み期間に演奏会を開くようですが、なぜ西浜は2月にやることになったのでしょうか?
A:実は3月は会場が取れなかった、ということと、Spring Concertの方に力を注ぐ、ということなんですね。でも、やっぱり2月にやるのは大変だと思いました。インフルエンザも蔓延していますし。他校が3月にやる理由も、そこにもあるのかもしれませんね。
Q:なるほど。では、今後も出来る限り活動を応援してゆきます。今日はお疲れ様でした。

 いつもニコニコ笑顔で取材に応じて下さる渡邊先生であるが、いろいろと葛藤もおありのご様子。でも、少しずつ着実に成長する部員たちは大切でたまらない、といったところでしょうか。

 間近に行われるSpring Concertを含め、今後の活躍を心からご祈念申し上げます。
 
2004.2.16 by 管理人