2014.12.31up
 
続けて欲しい,この試み
昨年に続き、管理人の所属する茅ヶ崎ロータリークラブが「5高祭」を後援させてもらいました。
(看板の題字をお書き下さった茅ヶ崎高校の生駒光織先生、素晴らしい作品をありがとうございました)

4度目となるこのイベントは、管理人のように、ちょっと離れた位置からこの地域の吹奏楽の活動、或いは部活動を見ている者にとっては宝物のような輝きを放っているように思える。

それはやはり、2011年3月11日の東日本大震災に端を発した「計画停電」により、春休みに行われる予定だった定期演奏会が各校中止を余儀なくされ、演奏機会を求めていた茅ヶ崎地区の5つの高校がその年のゴールデンウィークに藤沢市民会館で合同演奏会にこぎつける、というプロセスを管理人が見ていたことと無関係ではない。

定期演奏会はこの地域の多くの高校にとって、卒業する3年生が部活との別れをする儀式でもあり、その機会を喪失した生徒たち・指導者たちの落胆は大きかったことは十分想像できよう。

「プレ5高祭」とも呼べる2011年5月のあの演奏会こそが、現「5高祭」のルーツであり、「生徒たちに演奏機会を」という指導者の皆さんの学校の垣根を超えた団結と熱量は当事者ではない管理人にもヒリヒリする感覚で届いたものであった。

あれから4年近い歳月が過ぎようとしている今、生徒は勿論全員が入れ替わり、各校の指導者もかなり顔ぶれが替わった。

現高校1年生は、震災の時にはまだ小学生だったということに気づく。
 
夏のコンクール、秋のアンサンブルコンテスト、春の定期演奏会といったレギュラーイベントに加え、湘南地区では1月に「吹奏楽の集い」という、中学と高校が合同バンドを組んで演奏する催しもある。

そうしたタイトなスケジュールの中、この「5高祭」が続けられるかどうか、管理人は常に不安でもあった。

演奏会を1つ開催することがどれほど大変か、ということは理解しているつもりではあるので、出来るだけ継続してもらいたいという願いもあった。

「5高祭」には、少なくとも次のような効果があると管理人は考えている。

(1)横に繋がることの副産物

他校の生徒と知り合いになり、新たな友情が芽生えたり、大いなる刺激を受ける。
当然、自分や普段一緒に練習する仲間とは異なる音楽観とも出会う。
また、普段とは違う指導者と出会い、音楽に対する引き出しが増える。
これは、指導者側にも同じことが言えるのではなかろうか。

(2)ひと粒で5度おいしい

聴く側からすれば、5校の色を同時に味わうことが出来、しかも今後の方向性も見える。
ま、ある種のプレ定演とでも言えばよいか。

(3)バンドの成長がわかる


夏のコンクールで受けた印象が劇的に変わる、といったこともしばしばで、各校の伝統のスタイルがわかると同時に、変化の先端部分が垣間見える。
成長著しい高校生諸君も勿論であるが、同じ事は指導される先生方にも言えることである。


その「5高祭」が、来年以降の開催を一旦白紙にする、という衝撃の展開が待ち受けていた。

演奏会の中では正式なアナウンスはなかったが、吹奏楽部に所属する生徒たちから「今回が最終回だよ」と聞き、また、中心的指導者の方々からも、現在の形で継続するということについては難しい、との話を聞かせてもらった。

せっかく現場サイドの意志から生まれ、育ってきた演奏会なので、何とか継続してもらいたいと切望する次第です。
 

第4回「5高祭」テーマ 〜色〜
 
さて、今回の「5高祭」では、各校が自分たちの“色”を設定して、それに合わせた選曲により演奏をするというテーマでした。
(「この曲をやりたいから、この色」という決まり方も勿論あったと想像します)

それぞれの想いが込められた演奏は、やはり素敵だったと思います。

第1部の各校の演奏を少しですが紹介しますね。
 
第1部 各校演奏
茅ヶ崎西浜高校 テーマ色『青』
 
 
  
 
◆コーラル・ブルー 沖縄民謡「谷茶前」の主題による交響的印象[真島俊夫]
◆ラプソデイー・イン・ブルー[George Gershwin/栗山賀容小]
◆リトル・マーメイド・メドレー[Alan Menken/星出尚志]

 
学校別ステージでひと際楽しかったのが、この西浜だったと思います。

9年前の先輩たちがコンクールで金賞を獲ったのをずっとそばで取材していたので、今夏の金賞は本当に感動的でしたし、この日のステージも、サービス精神に溢れていたように感じました。

新任の長谷部裕介先生の明るいキャラと演奏(あの楽器は何というのでしょうか?管理人も欲しいなぁ、と)も、「5高祭」幕開けに相応しく、とても印象に残りました。
 

寒川高校 テーマ色『黒』
 
 
◆ちびクラと吹奏楽の為のちっちゃな協奏曲[酒井 格]
 
 ※ソリスト:太田友香さん(東京佼成ウィンドオーケストラ所属)
 
部員がやや少なくなった感は否めませんが、弱奏をしっかり吹くというテーマだったのでしょうか、皆が想いを共有して演奏出来ていたと思います。

今、寒川高校は過渡期なのかもしれませんね。

かつては部員6名という時代がありましたので、ここから是非盛り上げていって下さい。

応援しますよ!
 

茅ヶ崎高校 テーマ色『緑』
 
◆マーチ・グリーンフォレスト[内藤淳一]
◆稲穂の波[福島弘和]
◆マイアミ谷の詩[David Shaffer]

 

茅ヶ崎高校は昨年、指揮者が交替となり、新たにOGのサックス奏者である藤原みなみさんが「5高祭」デビューを果たしました。

かつては関東大会の常連だった茅ヶ崎高校が、2013年のコンクールでまさかの銅賞となり、部員たちにも動揺が窺えた時期もありましたが、昨年の5高祭を機に、かなり落ち着いてきたように思います。

演奏曲もかつてのコンクール課題曲を2つピックアップしてあり、基本に回帰しようという意図が見えました。

演奏もしっかりしていて、今回のテーマである「色」と楽曲がベストマッチングでした。
 


鶴嶺高校 テーマ色『青』
 
 
◆マーチ ブルースカイ[高木登古]
◆海の歌[Rex Mitchell]
◆Sky High[Desmond Dyer〜Clive Scott/建部知弘]

 
安定感抜群の音色だったと思います。

歳月をかけて積み上げてきたことが、現在の部員たちにも十分伝わっている印象ですね。

原大志先生と渡邊良子先生のコンビネーションも鶴嶺高校ならでは、という感じで、伸び代もたくさんありそうです。
 

茅ヶ崎北陵高校 テーマ色『赤』
 
 
◆「カルメン」より  闘牛士〜ジプシーの踊り[George Bizet]
◆アメリカン・グラフィティ]]V シカゴ・ロック Introduction 〜 Make Me Smile 〜 Hard To Say I'm sorry
 [Terry Kate〜James Pankow〜Peter Cetera〜David Foster]
 
「カルメン」は定演でのメイン曲だそうですが、かなり仕上がっている感じがしました。

とにかく音が“分厚い” という印象で、指揮の新倉先生もそのあたりは強く意識しているのかなぁ、という印象です。

「Hard To Say I'm sorry」は、管理人がプータローだった頃に流行った曲で、パチンコの景品で取ったレコード(!)で擦り切れるほど聴いた記憶があります。

客席で目頭が熱くなる管理人でありました。
 

第2部 全員合奏
 
第2部は全員がステージに乗り、合奏するという壮大な演奏。

百数十名をコントロールするのは容易ではないでしょうが、ちゃんと指揮が出来たらすごい達成感があるでしょうね。

今回、北陵高校の新倉先生と、鶴嶺高校の渡邊先生が指揮をされましたが、マジで羨ましかったです。

「アルメニアンダンス・パートT」は、2小節(たぶん)あるトランペットのソロと、そこに至るまでの徐々に盛り上がってゆく感じがたまらなく好きで、今回も鳥肌が立ちました。

他地区ではなかなかない、5高祭ならではの全員合奏がもしやこれで最後かと思いながら聴いていたせいか、昨年までよりも、鳴り響く音がとても愛おしく思えました。
 
◆アルメニアンダンス・パートT[Alfred Reed]
◆宝島[和泉宏隆/真島俊夫]

 
 
  
左)終演後、各校代表が客席に言葉を贈る 中)司会の中田稔先生(茅ヶ崎)と北陵の新倉徹也先生 右)鶴嶺の渡邊良子先生
 
「5高祭」が終わった。

今年は、というだけでなく、もしかするとこれが最終回になる可能性もあるのだ。

繰り返しになるが、何とか続けて欲しい、というのが管理人の願いだ。

この記事を書くのに、とても大きな逡巡もあったのだが、願わくば関係者の皆さんで、再度原点を見つめて頂き、何らかの形で戻ってきてもらえれば、と。

末筆となりますが、参加された皆さん、お手伝いをされた皆さん、本当にお疲れ様でした。

また、零細メディア「部活ネット」にお声掛け頂いたたくさんの皆さん、思いを込めたメールを下さった指導者の皆さん、ありがとうございました。

ちょっとせつない年の瀬となってしまいましたが、管理人も適切に頑張ります。

皆さんによい年が来ることを祈念致します。

2015年も、よろしくお願い致します。