2012.07.28up
 
 
内なる気も外気も熱く
 

何しろ暑い。

7月26日、管理人はコンクール会場である茅ヶ崎市民文化会館から徒歩5分に位置する職場(予備校)から歩いていったわけだが、会場に到着するまでに既に大量の汗。

会場に到着して当日券売り場に行くと、「高校A部門の開場は予定より10分遅れますのでご了承下さい」と言われた。
(たぶん、高校Aの前に行われていた中学A部門が延びたのかと)

その時、時刻は午後4時10分。

本来の開場時間は4時45分であるから、まだ30分以上はあるのだが、既に並び始めている。

管理人は外の景色でも撮影しようかと、列には加わらず、会場から外へ出てみた。

やめておくべきであった。

何しろ、クソ暑い。

会場の中では、中学生と思しき女の子が一人ぐったりと座り込み、他の子数名が水分を与え、うちわで扇いであげている情景も目に入る。

軽い熱中症かもしらん。

で、管理人はふと気になった。

このまま開場時間が遅れ続けると、開場待ちの客人の列はどんどん長くなって、ホールに収まりきらず、どんどんと外へ繋がってゆくであろう、と。
(実際、管理人はそういう場面を何度か目にしている)

もともとの暑さに加え、甚大な人口密度ゆえ、大ホール入口から外まで続く客人たちは皆、扇子・うちわをはじめとする「手動風力機」で自らや子供、お年寄りに風を送り、何人もの人たちが水分を補給しようと、飲料水販売機を探す。

管理人はたまたま冷水機のすぐそばに並んでいたので、無料で冷たい水を飲むことができたが、結局開場は予定より30分ほど遅れ、倒れる人が出ても不思議ではない状態かと思われた。

どうやら事なきを得たようだが、コンクールは運営するのも本当に大変だと感じた次第である。

管理人が翌日のB部門も開始が遅れ、また長らく待つという可能性を察知し、こっそり冷たい飲み物を用意したのは言うまでもない。
(そして、実際にそうなった...)

 
  
猛烈な長さとなった開場待ちの人波。ま、これも夏の風物詩と言えなくもありませんが...
 
7/26 激戦のA部門 日大藤沢と湘南が県大会へ
 
 
金賞:北陵、日大藤沢、湘南

 ※このうち、日大藤沢と湘南が県大会へ

銀賞:藤沢西、茅ヶ崎

銅賞:慶應湘南
 

結果として、日大藤沢・湘南が県大会への出場となった。
※県大会は8/10(金)神奈川県民ホールにて

聴いていて、何となくそうなるような予感もあったが、実は2校の自由曲が“現代音楽風”で、Aでは(もしやBでも?)こういうテイストの作品でないと評価を受けにくい、或いは、少なくともこういうテイストの楽曲の方が高い評価を受けやすいといった流れがあるのかな、と。

管理人は湘南吹奏楽コンクールしか聴いていないため、湘南地区で実際に演奏される曲が、全国の吹奏楽コンクールの縮図だという仮説を立て、それに基づいて話をしているわけだが、もしもそれが正しいとすれば、ちょっとせつない気もする。

2年前の夏、湘南高校が東関東大会への出場を勝ち獲った頃は[こちらを参照]、それが湘南らしい(というか、指揮者の小澤篤さんらしい)選択であり、それが受け入れられるかどうかは個々の審査員の気持ちのありようにも左右されると考えていた。

つまり、こんな言い方をしてお叱りを受けるかもしれないのだが、“正統派吹奏楽曲”(という言い方が存在するかどうはさておき)に対してのアンチテーゼというか、二項対立の設置というか、そういう意味の役割・機能があるように思えて、ひじょうに好ましく見ていたのだが、ここ数年は課題曲Xがやはり“現代音楽化”していて、全体としてそちらに傾いているのかとも感じられる。

勿論、管理人のもの凄い勘違いかもしれないし、一時的な、或いは湘南地区に特有の風土的なことかもしれない。

単にそういう曲を選んだ学校が技術や音楽面でも優れていただけ、ということかもしれないが...。

いやいや、なぜそんなことを言うのかと言えば、日大藤沢(演奏順が湘南より先)の自由曲を聴いた時、即時「う〜ん、湘南とテイストが近い」と感知し、「う〜ん、この手の楽曲が複数出てきたら、オイラにはその善し悪しはおそらく判断できない...」という、ちょっとした悲しみに似た気持ちを抱いたからなのだよ。

ま、おっさんの戯言だと思って、見逃して下さいまし。
 

このバンドのここが素敵 「A部門」編 ※記載は出演順です
 

【北陵】コントラバス3本、男子6名
 課題曲W 行進曲「希望の空」(和田信作曲)   
 自由曲 序曲「謝肉祭」(A.ドヴォルザーク作曲/鈴木英史編曲)

詩情溢れる風景を、奇をてらわず、しっかりと1つずつ音楽にしていこうという気持ちが伝わる演奏。
「強⇒弱⇒強」の流れ、特に場面転換での弱奏部が聴かせどころという意識があるため(たぶん)、音を圧縮して、抑えの効いた演奏は素晴らしかった。

事前取材[詳しくはこちら]させてもらっていたので、サックスの湯浅部長の足が痛そうだとか、トランペットの渡辺くんが「楽しく」演奏しているかどうか、ちょっと気掛かりだったが、少なくとも管理人にはよい演奏に聴こえたよ。


【日大藤沢】コントラバス1本、男子5名
 課題曲U 行進曲「よろこびへ歩きだせ」(土井康司作曲)
 自由曲 ウィンドオーケストラのためのマインドスケープ(高昌帥作曲)

課題曲で、木管のピッチがやや気になる場面もあったが、溶けそうになるほど、優しい気持ちにしてくれる演奏だったので、自由曲への期待感がひじょうに高かった。
そして、現代音楽的要素を多分に含んだ自由曲も、その期待に背くことなく素晴らしいデキであった。

テンポ変化に於ける高いシンクロ性により、聴く者の気持ちを揺さぶり、音が途切れそうになるところをぎりぎりで繋いでゆくようなイメージで、ひじょうに素晴らしいと感じた。

Sudden Death的な終わり方と、それに続く「立ち」⇒「礼」も一連の流れとして、かなり練習を積んできたように見え、ビジュアル的にも楽しませてくれた。

正直に言うと、部分的にはちょっと雑な感じがするところもあったが、県大会に進めることになったので、そうした改善点を修復することで、もっと高い評価を得られるのかもしれない。

 
 

【藤沢西】コントラバス2本、男子3名?
 課題曲W 行進曲「希望の空」(和田信作曲)   
 自由曲 
パンドーラの箱(八木澤教司作曲)

指揮者の丸山透先生(通称・とおるちゃん)が「パンドーラの箱」の演奏が3度目で、解釈度が上がったことを窺わせる演奏になっていた。

特に冒頭の、何ものかがものすごく遠いところから少しずつ近づいてくる様や、マイナーの場面での恐さを伝える音、最後のテーマからの泣けるような展開は、聴いていて鳥肌が立つほどであった。
打楽器のシンクロ性の高さが、それらを支えており、ひじょうにバランスのよい演奏だった。


【湘南】コントラバス2本、男子13名?

 課題曲X 香り立つ刹那(長生淳作曲)   
 自由曲 
ディオニソスの祭り(F.シュミット作曲/服部浩行編曲)

課題曲の選択からして、既に小澤ワールド全開と言える。
(課題曲Xを選んだのは、湘南を含め神奈川では6校のみ)

そして、勿論、自由曲も現代音楽テイスト溢れる「ディオニソスの祭り」。
たぶん、とても巧いのかなぁと思うのだが、どのくらい巧いのか、管理人には見当もつかず。

これは管理人の思いつきの提案であるが、湘南高校はその持てる技量を定演や文化祭などの自由な演奏が許される場面で、これはと思える映像を背景に流しながら、ここ数年のコンクール自由曲をやってみてはどうっすか?

おそらく、コンクールとはまた違った湘南高校の側面を見せられるのではないかと期待しています。


【茅ヶ崎】コントラバス3本、男子6名?

 課題曲W 行進曲「希望の空」(和田信作曲) 
 自由曲 パッサカリアとトッカータ(福島弘和作曲)

管理人的には金賞でもよかったのでは?と思う演奏だった。

確かめたわけではないから、何とも言えないが、「シンプルに」「表情をつけて」というテーマが存在していたのかと思うほど、指揮者・内川裕子さんと部員たちの意志が現れている素敵な演奏だった。

特に弱奏部から中間音量で演奏する場面で、1つ1つの音粒を丁寧に扱おうとする姿勢、低音で揺さぶりを掛ける場面での息遣いといったものが秀逸だったと思う。

管理人メモには「新生・茅高誕生か?」と書かれている。

たとえ銀賞であったにしても、今ある音楽に対するアプローチは続けて欲しいなぁ。

7/27 B部門 寒川,改善の余地残して県大会へ 鶴嶺も2年連続
 
 
金賞:寒川、藤沢総合、鶴嶺

 ※このうち、寒川と鶴嶺が県大会へ

銀賞:湘南学園

銅賞:西浜、アレセイア
 

※県大会は8/11(土)川崎市教育文化会館にて

管理人の最大の驚き(と言うと、すごく失礼ですが)は藤沢総合の躍進であった。

出演順が、優勝候補(?)寒川の直後ということもあって、プレッシャーもあるのでは?と思って聴いていたが、演奏が終わったあとは、「これ、県大会でしょ」(管理人メモによる)という印象であった。

詳しくは後述するが、2009年は銅賞、2010・2011年は銀賞とステッフアップして、この夏一気にブレイクした。
県大会に行けないのは残念だが、是非この勢いを保って欲しいと思えるバンドであった。

また、1位通過を果たした寒川は、おそらく彼らの絶対評価の中ではそれほどよい点数がつけられない演奏だったかもしれないが、それでもトップだということは、ベースの部分でどれだけアドバンテージがあるのかと、奇妙なところで感心した。
 

このバンドのここが素敵 「B部門」編 ※記載は出演順です
 
【寒川】コントラバス1本、男子4名?

 ウィズ・ハート・アンド・ヴォイス(D.R.キリングハム作曲)

岡田さんと部長の久林葵さん
指揮の岡田寛昭さん曰く

「みっともない演奏ですみません。吹けてないし、音は出てないし。まだまだ持っている力を出し切れていませんね。」

成績発表後、関係者通路で会った瞬間の言葉であった。

彼らは上を目指そうとする意識が高いため、今回の演奏くらいでは満足できないという感じがありあり。
 
それでも1位通過、というのは大したもの。

管理人メモには「抑えめの音量?」「細かな音と音との繋がりに若干改善の余地?」「ミストーン?」といった言葉が書きつけられている。

管理人は寒川吹奏楽部のファンであり、彼らがそろそろ県大会の壁を打ち破り、まず東関東大会に進出してくれることを切望しているので、厳しい見方もするのだが(他校のメモにはそういう厳しい視点はあまり出てこない)、それが当事者だともっと厳しい、ということであろう。

部長の久林さんは

「ダメな演奏だったけど、県大会に出られてホッとています。本当は金賞ももらえないかと思っていましたので。これでこのメンバーでもう少し一緒に音楽が出来て嬉しいです。目標は東関東大会出場です!」

と反省と抱負を述べてくれました。

勿論、管理人メモには「不安を煽る始まり」「転換部での強烈ダイナミクス」「弱奏の金管きれい」「最後、地底から湧き上がる音、大迫力、圧巻」といった誉め言葉も並んでいる。

これだけ厳しい自己評価ができる、ということは県大会に向けての課題が十分わかっている、ということなので、逆に期待してしまう。
っつーか、皆で期待しよう。


【藤沢総合】コントラバス0本、男子6

 喜歌劇「伯爵夫人マリツァ」セレクション(E.カールマン作曲/鈴木英史編曲)

何しろ見ていても楽しかった。

打楽器の使い方のバリエーションが多彩で、おそらくは打楽器専属メンバーだけでは足りないので、管楽器メンバーも入れ替わり立ち替わり打楽器を演奏する。
その様はビジュアル的にも面白いが、音としてもしっかりと自己主張していた。

また、押せ押せ・イケイケの音楽ではなく、細かな部分も丁寧にいこうとする意志を感じさせるバンドだった。
終盤の、一瞬これで終わりかなと思わせたあとに、また演奏が始まり、そして今度は本当に終わる、というドラマチックな展開も管理人のツボに嵌るものであった。

指揮者の裏地慎さんとは面識がないのだが、是非、部員たちから力を引き出す指導を続けて頂きたく思う。
県大会に行けなかったのは残念だが、まだまだ伸びる余地のあるバンドなので、地道に、楽しく演奏をしていって下さい。


【鶴嶺】コントラバス1本、男子3名?

 ファイヤーストーム(S.ブラ作曲)

以前、西浜を指揮されていた渡辺良子先生が鶴嶺赴任2年目で、いよいよコンクールに。
どういう色の音楽になるのか、楽しみだった。

バランスとシンクロ性を重視するせいか、全体的なダイナミクスが小さく感じられるところもあったが、ひじょうによくまとまっている印象で、そういう意味からは藤沢総合よりも勝っているように思えた。

途中のサックス・ホルン・トロンボーン(ミュート)の掛け合いなどは、バンドとしての面白さを十分発揮していて、よい曲を選んでいると感じた。

また、コントラバス(たぶん男の子)の弓遣いに思いきりが見られ、バンドの将来性もあると予見させてくれる演奏だった。

増えよ,男子!
 

近年、男女の衣装を揃えるチームが増えた関係で、正確に男子の数をカウントできてはいないかもしれないが、A・B両部門12チームでステージに乗っていたと思われる男子は61名。

割合としては、女子の7分の1程度だ。

男子の音楽好きが、吹奏楽部よりも軽音楽部を選ぶ傾向があるらしく、その流れを止めるには、とにかく4月に2・3年生部員があらゆる手を講じて新1年の男子を連れてくることだろう。

実際、寒川高校では今年、新1年の男子を10名近く獲得している。
男子部員がある一定数以上いることで、思い切りのよさが生まれたり、ダイナミクス変化もつけやすくなるだろうし、何より楽しいんじゃないの?

来年、もう少し男子部員が増えていることを念じつつ...

それでは、県大会への出場権を得たチームの方々、日々暑いですが、熱中症に気をつけつつ、しっかり目標を立てて頑張って下さいね。
心から応援しています!