◇年度別定演特集 2008年 2007年 2006年 2005年 2004年 

寒川高校(3/19実施) ◇湘南台高校(3/26実施) ◇北陵高校(3/28実施) ◇湘南高校(3/29実施)
 
 管理人は日頃、大学受験業界に身を置く宿命からか、暦の上で年が明けても、どうしてもスイッチが切り替えられない体質になっており、吹奏楽の定演を聴くことでようやく春の訪れを実感し、これからの一年を頑張っていこうという気持ちに至ります。

 今年は桜の開花予想が早めであったのとは裏腹に、寒い日が続いたせいか、定演実施の頃は茅ヶ崎の中央公園や藤沢の市民会館周囲の桜もまだ3分咲きといった趣でした(3/29現在)。

 それでも、少し開いたつぼみにちょっとした愛しさを感じるのは歳をとったせいかもしれません...。

 いずれにせよ、この春、管理人はまたしても音楽の持つ偉大な力を感じずにはいられませんでした。その一端をお伝えできれば幸いです。

 記事を書きあげたものから順次アップさせて頂きます。尚、それぞれの紹介文などが例年より若干短めになるかと思いますが、ご容赦くださいませ。
 
2009.4.6記 管理人

 

09.04.06up
 
 
開演前のハンドベル演奏。これから始まる定期演奏会に厳かな色を添える要素であり、もしかすると演奏者の気持ちを落ち着かせる、という意味もあるのかもしれない。
 
ごめんなさい。管理人、第一部しか聴けず...
 

ものすごく楽しみにしていた寒川高校の定演だったのですが、その日の夜に突然の仕事が入ってしまい、時間の都合で第一部までしか聴けないということになってしまいました。

寒川高校吹奏楽部の皆さんに対して申し訳ない、という気持ちは勿論ですが、自分が悔しいですね。

そういうわけなので、写真による雰囲気の伝達以外、プログラム全体のことや演奏についてのコメントは遠慮させて頂きます。
その代り、指揮の岡田寛昭さんから頂いた後日譚を紹介させてもらいますね。

定演の数日後、彼らはチーム対抗カレー合戦(一番おいしいカレーを作ったチームが豪華な具材を入れられる!) をやってみたり、さらには思い出のCD作成(音楽室で録音したものをエフェクト処理するというものだそうです)をやったそうです。

こうしたことの一つ一つは岡田さんの生徒に対する熱意・思い入れが表れたものなのだと、いつも感心します。
彼はいつも「生徒が主役」ということを心掛けていて、それは本来、管理人を含む、教職に就く者こそがもっと実践すべきことなのだと痛み入ります。

寒川吹奏楽部の子たちは幸せだと思います。

また素敵な演奏を聴かせて下さいね。
 

  
 
 

09.05.31up
 
これが全国一の演奏です
 
アップが遅れまして著しく申し訳ない気持ちです。

結論としては、やはり湘南台の場合、「見て」「聴いて」もらうのがベストだということに気づかされるこの頃です。
何しろ、狙いにいって日本一を勝ち取るチームですから、最低限度の基礎知識は前年度のページに譲って、2008年度のオリジナル曲である「B2」をご紹介させて頂きます。

08年度定期演奏会特集・湘南台高校

参考のため、1月に行われた全国一のお披露目演奏の際に撮影させてもらった映像もどうぞお楽しみ下さい。

ちなみに、定演の際は背面側(?ドラムメジャーが見える方向から、という意味です)から、グランプリ受賞報告会の際は正面側から撮影したものです。
 
 
=定演バージョン=

 
こちらは09年3月26日実施の定期演奏会でのものです
作品の著作権は湘南台高校に属します
 
 

=グランプリ報告会バージョン=
 
 
こちらは09年1月8日実施のグランプリ受賞報告会でのものです
 
 
  
何しろすごい数のお客さんでした。聞いたところでは1,200名程度入っていたのでは、とのことでした。会場の秋葉台体育館はデザインがユニークです。誰が設計したのか興味が湧きます。
 
  
  
  
 
シンクロ性を音と絵の両方同時に楽しめるマーチング。もっとメジャーになる日も近いと確信します。その日まで、羽場先生(写真最下段右)も頑張って下さい!また、取材させて頂きますね。

09.04.06up
 

遠大なる助走なのか
 
  
開場前、長蛇の列が。父母・OBといった関係者以外にも相当数のHWEファンがいると見受けました

今回、HWEの定演は29回目であった。
それは勿論、30回という節目を目前にしていることを示している。
管理人は、HWEの演奏会プログラムが毎年よく練られていると感じるのだが、今年は大きな区切りを前に、もしや来年のことまで考慮して演奏曲及びその並べ方を考えているのかも、と予測してみた。

そして、それはたぶん当たっているのだと感じている。

こういう言い方をするとやや不謹慎かもしれないが、「29回目なのに」すごい熱量だったのだ。
大いなる節目への遠大なる助走でもあり、そして勿論、今回の定演に懸ける意気込みが十二分に伝わる、嵐のような時間であったと言えよう。

HWE定演に於けるアンサンブルの存在意義について考える
 
  
  
  
左上から順に打楽器八重奏・金管八重奏・サックス四重奏・金管十重奏・木管四重奏・フルート五重奏・サックス四重奏・クラリネット四重奏(但し、名称につきましてはもっと別の呼び名なのかもしれません。悪しからず)
 
開演前及び第3部開始前に計8チームのアンサンブルが演奏された。
管理人は少人数による室内楽といった趣が大好きなので、大歓迎ではある。
しかも、HWEのアンサンブルチームは秋にアンサンブルコンテストの校内予選を経て登場するため、熟練度も高く、ひじょうに安心して聴ける。

勿論、アンサンブルチームが登場するのには様々な事情(あまり高カロリーなものばかり食べさせない工夫であるとか、実際にステージに乗る部員の呼吸を整える時間を作るといった)はあるのだろうが、管理人にとっては、前年秋に一度完成度を上げた楽曲を、しばらく寝かせたのちに再度演奏してくれるのは味わいが増して、より感銘を受けるというわけだ。

いくつか感想を述べさせてもらうと...

打楽器八重奏
テンションの高いシンクロ性と強弱のコントラストが際立っており、キレも素晴らしかった。
昨秋のアンコン湘南地区予選でも管理人個人としては全体の中で2位の評価であったが、今回もとても楽しく聴かせてもらった。

金管十重奏(という呼び名でいいの?)
おそらくは2年生(新3年生)と思しき軍団が、ミュートをつけたり外したりと忙しく演奏し、それがまた楽しかったりする。
終いには指揮の丸山先生がシャンペンの栓を抜くシーンなどもあり、HWEの定演としては珍しくSHOW UPされている。
とにかく演奏者が楽しそうであるところが印象的であった。

サックス四重奏
昨年度、関東大会まで進出したチームの演奏(たぶん)。
圧倒的存在感があり、音の強弱・シンクロ性・バランスとも、最早“条件反射”で身についていると思われる。
ダイナミクスの上げ下げなど自在に操る演奏で、かなり余裕が感じられた。
こんな風に吹けるときっと楽しいよね。


さらなる要望があるとすれば「コントラバス楽団」が今年は登場せず、寂しかったということでしょうか。
管理人はアレ、大好きです。

=第一部=
 
HWEの演奏前にゲストの村岡中の演奏があったため、既に一旦ちょっとした満腹状態になっているところなので、それを解除しつつ、次なる食欲を湧かせるための仕掛けだったのかもしれない。

「コヴィントン広場」(スウェアリンジェン)
HWE定演の慣わしで、第一部の1曲目はどうやら前年夏のコンクールB部門自由曲を演奏するようで、今回もその例に倣ったわけだが、当然昨夏1年生部員だけで演奏したものとは厚み(特に金管)も余裕も違う。
優しくて涙を誘うような演奏はHWEの一つの特徴でもあり、テンポ変化も巧みであった。
この曲の存在が、定演全体をコントロールしようという位置づけであるのは間違いなく、すっかり胃を落ち着かせてくれた。

「ウエールズの歌」(ディヴィス)
指揮者は村岡中顧問の石井力さん。
木管群での始まりはまさに子守唄のようであったが、HWE2009バージョンが「金管バンド」なのではないかと思わせるような音の引き出し方に思えた。
(管理人の思い過ごしかもしれませんが...)

「トランペットとオーケストラのための協奏曲」(アルチュニアン)
トランペットにアレクセイ・トカレフさん(通称・トカちゃん)登場。
...で、管理人が今まで聴いたトカちゃんの演奏で最も背筋が震えました。

トランペット特有の“突き刺すような”音も勿論なのだが、海底を歩くような優雅さや、哀愁を帯びたミュートなども感動的だった。
それを支える地味な(失礼!)打楽器や木管に厚みを、コントラバスと金管に煽情的なにおいを感じた。

そして、陳腐な表現で申し訳ない限りであるが、「音楽は時空を超える」というのは真実である。
トカちゃんは定演に限らず、HWEと毎年のように協演するが、それは幾重にも偶然が繋がって実現しているという意味で“奇蹟”だと言えるのだ。

管理人は彼のことを親しみを込めてトカちゃんとかロシアの大巨人とか言ったりするが、彼が日本に移住するのを決意することがどれほど大変だったのか、想像もつかなかったりするわけだ。
(初共演の際、奥様を交えてインタビューさせて頂いたが...⇒こちら

日本で生まれ育った人であっても、年齢や過ごした環境が違えば、分かり合うのに時間が掛かったりもするが、“音楽”という共通項はそういった多くの煩わしさを超越させてくれる。
管理人はトカちゃんとHWEの生徒たちの姿を見て、いつもそのことを感じずにはいられない。

第一部の締めくくりとしては実にハマる演奏だったと言えよう。
 
  

=第二部=
 

「アイヴァンホー」(アッペルモント)

「波だ」

管理人は演奏の始まりを聴いて、そう感じた。
暗い海の上で波に呑み込まれそうな恐怖、そこで風が凪ぎ、ようやく少し眠りに落ちる。
そして水平線に壮大な朝日が...

といった臨場感を伴う絵画的イメージに自らが放り込まれたようであった。
(解説を読むと全然違うことが書いてあるんですが...)

打楽器大暴れの激動から金管がかぶさるように加わって、嵐の予兆。
そして最後はひじょうに緊張感とシンクロ性の高いブレイクで締める、という構成。

もう、この曲がこの定演のメインディッシュだと言っても問題がないくらいではあるのだが...

管理人のすぐ隣に座っていたおじさん(失礼)は、この曲がたいそう気に入ったと見え、演奏の間ずっと足でリズムを取っていた、ということを報告しておこう。

「バレエ サクラ」(ホルジンガー)
出ました、ホルジンガー。
HWE定演では4年連続の登場の作曲家で、HWEの一つの方向性を位置づけるかのようだ。

管理人は今以て吹奏楽の素人であるが、ホルジンガーの曲は初めて聴いても「これってホルジンガーっすか?」と当てたこともあるほどで、HWEの定演を通じて大好きになりました。
ところが、一般的なCDショップなどでは彼の作品は売っておらず、既に廃盤となっているため、輸入盤か中古しか入手できない状況にある。

ん〜、由々しき問題かと。
(おっ、輸入盤を買えばいいのか...)

で、肝心の演奏であるが...

このバンドにはホルジンガーをよく解釈して(≒愛して?)、それを聴く者に伝えようとする力が漲っている。
ダイナミクスは最初からMAX、変拍子あり、遠鳴りする歌あり、弾けるブレイクあり。
聴く者を甘えた状況には絶対にさせてくれない、迫りくるサウンドの渦。
それでも、底流を静寂なテーマが支え続けているというこの作曲家らしい作風を随所に聴かせてくれて、出色の出来だったのではなかろうか。

コマ送りの疾走シーンから、「生かされている」という自覚、歓喜の激しいダンス、眠り。
管理人には彼らの演奏から、そんな絵が浮かんでいた。

トランペットソロも安定していて、この楽曲をパッケージ化してみせるのに多大なアシストをしていた。
そして、プログラム構成上、この曲こそは思春期の迷いや疾風怒濤を如実に表現するものだと確信した。

いつも思うことだが、この演奏を言葉で伝えることに大きな無力感を禁じえない。
写真に音までは入らないのが残念でしかたない。
勿論、著作権(というか、知的財産の所有権)といった問題も理解できなくはないのだが、音楽は聴いてもらって初めて価値が生まれるとも言えるわけで、時として矛盾を感じる。

個人的には、心の中のマグマを掻き立てずにはおかないホルジンガー作品をもっともっと聴きたい。
気持ちが沈んだ時にはホルジンガーで決まりかも。

にしても、指揮の丸山先生が台上で大暴れという風情のこの曲。
まだ第三部が残っているけど大丈夫かなぁ、と心配したりもした。
ま、おそらくそれを計算に入れたアンサンブルチームの登場だったとは思いますが...
 


=第三部=
 
「ドラゴンの年」(スパーク)
第二楽章(?)の始まりはいきなり強く吹くなぁと感心。
それってきっと難しいんですよね?
(誰に聞いてるんだか...)

落着きを取り戻した街を空から俯瞰するような壮大さを感じる。
(まさかそれが「ドラゴン視点」とかってわけではないッスよね?)

そして第三楽章では「さあ行くぞ」というエネルギーに満ちていて、エンディングのブレイクは極めて美しい。
この曲を演奏することで、苦悩の青春時代との訣別を表現しようとしているのかと感じたが、どうだったのかな。

今回の定演は例年より時間的に少し長い(約3時間)ので、管理人は他のお客さんがどんな表情でこの曲を聴いているのかをチラチラと見ていた。

...大丈夫。
アンコールを含め、音楽を仲立ちとした演奏者と聴衆とのコミュニケーションはたいへんうまくいっていると見受けられた。
 
アンコールの「DEATH or GLORY」は毎度のことながら、全員が起立して演奏する場面が感動的。直球中心で過剰な演出が全くない分、ちょっとだけ曲がるカットボールが凄い変化球に見える、という原理同様で、HWEのストイシズムの発散・解放ががここに凝縮されているように思える。

「気の早い楽団」の本領発揮:第30回定演は...
 
演奏終了後、顧問で指揮者の丸山透先生にちょっとだけインタビューさせて頂きました。

管理人「今回はたいへんなカロリー消費量という感じでしたが...」
丸山先生「『アイヴァンホー』は特にホルンが、『ドラゴンの年』は特に打楽器の生徒たちがどうしても、ということで。本当にできるのか、と何回か聞いたんですが、やります、と言うものですから...」

管理人「指揮者もたいへんですよね?」
丸山先生「ホルジンガーもあるわけですからね。もうこれは年寄りには相当ツライものでした(苦笑)」
 
その後話題は専ら来年の定演のことに...

管理人「いよいよ来年は第30回の記念定演ですね。既に何曲か決まっているとのうわさですが...」
丸山先生「ええ。八木澤教司さんにHWEのために新たに書き下ろして頂く曲と、トカレフさんにトランペット協奏曲を一緒に、ということでお話を頂いています。そして、いよいよ長年のリクエストにもお応えしようかと...」
管理人「ボ●ロということでよろしいでしょうか?」

丸山先生「...」
管理人「●レロっすよね?」

というわけで、管理人が長年是非HWEで演奏して欲しいとねだり続けてきた『ボレ●』が日の目を見る時が一年後に迫ってきました。
(たぶん...ですが)

また、八木澤さんの作品はHWEのためのオリジナル曲なので、映像・音声付きでWEB配信することも可能になりそうです。
いやぁ、実に楽しみですね。

今回あらためてHWEの内包するマグマ埋蔵量に驚かされたわけですが、来年もまた熱く、楽しく、規律ある演奏会となることを期待していますね。

部員の皆さん、関係者の皆さん。
お疲れ様でした。
 
photos by T. Imai
 

09.04.13up
 
それは「賑やかなおもちゃ箱」
 
その昔(管理人がまだ小学生だった頃なので35年以上前のことで恐縮です)、森永チョコボールというお菓子があった。
<管理人・注>もしかしたら今もあるのかも...

管理人はそのお菓子が大好きだった。
チョコの取り出し口が鳥のくちばしに見立てて作られており、封を解いてそのくちばしを開ける時はいつもドキドキものであった。
というのも、そのくちばしが“金色”なら1枚、“銀色”なら5枚を送ると『おもちゃのかんづめ』と交換してくれるという、少年を心を鷲掴みにして放さない懸賞つきなのであった。
(ちなみに、金色のことは「金のエンジェル」などと呼称する慣習であった)

先に金のエンジェルを引き当てた幸せ者に見せつけられた『おもちゃのかんづめ』は神々しいばかりに輝き、1つ1つのおもちゃが醸し出す溌剌とした力強さは忘れ難い。
管理人は今以てあれ以上の素敵な懸賞とは出会ったことがない。
(もちろん、あれより高価なものは数えきれないほど見てきたが)

管理人にとって、湘南高校吹奏楽部の今年の定演は、幼少期の淡い記憶『おもちゃのかんづめ』 そのものだった。

去年も似たようなことは書いたかもしれないが、湘南高校定演の前日が北陵高校定演であり、そのコントラストはあまりに大きく、少し時間を置いて冷静になってみようと努めたのだよ。
でも、本当にいい意味で『おもちゃのかんづめ』だと言わせてもらいたいなぁ、と。

とても楽しかったです。
  
開演の頃にはお客さんがいっぱい。外では桜もぼちぼち咲き始めた、という感じでした。

=第T部=
 
白いワイシャツ、みどり色のネクタイ、黒いズボン。
文字通り“ユニフォーム”であった。

そして、勿論意図して並べた楽曲なのだろうが、3曲目の『くるみ割り人形』に至るまでが前菜としての役割を存分に果たしていたのは特筆ものだった。

演奏会の始まりというのは演奏する側も、また聴く側も緊張するものであるが、ある意味で“ショートピースの連続”の中、演奏のない(つまり休符の)部員たちに注目していたら、指揮者との呼吸を合わせようという参加意識が強く感じられた。
それは見る者をも安心させる材料になり、だんだんと音に引き込まれるというわけだ。

特に『くるみ割り人形』は、クラシックバレエの定番とプログラムでも書かれている通り、誰もが聴いたことのあるフレーズが連続することで、客の緊張はほどよく解けてゆくのが見て取れた。

そして、第一部の仕上げに指揮の小澤篤さんが登場。
『ラ・フォルム・ドゥ・シャク・アムール・ションジュ・コム・ル・カレイドスコープ』(タイトル長い...)は途中、木管のソロなども美しかったのだが、打楽器のための曲なのかと思って聴いていた。
ダイナミクスが激しく変化する中、打楽器群は時折前面に出たかと思うと奥に引っ込み、裏の方で低く鳴っているという印象であった。

...管理人は個人的趣味の問題で打楽器に肩入れする傾向がありますから、本当のところは全然違う演奏を目指していたのかもしれませんね。
だとしたら、ゴメンしてね。
 
  
  

=第U部=
 
この第二部こそが、管理人に『おもちゃのかんづめ』を想起させるステージであった。

近隣他校の定演ではまず聴くことのできない“OBのみで演奏される”楽曲。

特に今回は指揮の佐藤尹一さんが50年前の卒業生ということで、実はそれだけで管理人は瞼の裏が熱くなり、わずか2曲のマーチ演奏であったが、まるでステージに乗っている人たちの人生が脳内に去来するかのような錯覚を感じた。

定演自体の回数は29回かもしれないが、脈々と続く伝統の力というのはやはり侮れないものだ。
湘南高校の名のもとに、音楽の名のもとに、集まるOBたちは、もしかするとお互いの名前もよくわからないという状態なのかもしれないが、その2つのキーワードによって瞬時結ばれる。

白髪の、或いはその髪さえもあまり残っていない老紳士。
おばさん、おっさん。
まだ卒業してまもないと思しき若人。

北陵の定演にロシアのトランペッターが登場し、国境を超えた演奏を聴かせてもらったのに続き、湘南では時間概念を打ち破るような演奏が聴けて、ひどく感動させてもらった。


本当に音楽というのは時空を超えるものだと震撼させられたのであった。

去年もOBのステージについてはいろいろと書かせてもらったが、湘南高校ならではの味わいを是非継続してもらいたいと切望します。
 
  
『星条旗よ永遠なれ』でフルート部隊が立ち上がって演奏するに至り、管理人は涙を禁じ得なかった
 
  
譜面台に汽車のイラストが。湘南の定演ではそういったおしゃれが必ずワンポイントあって、聴くこと以外にも楽しみが見つけられる
 
その感動も冷めやらぬ中、おそらくはかなりの難曲と思われる『ゴーストトレイン』の演奏が始まった。

この曲をやろうと、誰が言い出したのか。
大冒険だった。
しかし、冒険というのはやってみないとその怖さや楽しさは実感できないものだからね。

管理人の音楽経験で言うと、ビートルズの『A Day in the Life』のエンディング(オーケストラが最終符で一斉にブレイク。その残響音だけがず〜っと続く)が頭から続くような緊迫感。
管楽器はポルタメントとでも言えばいいのか、半音をさらにものすごく砕いた音が連続している状況を表現し、テンポの上げ下げもひどく激しい。

恐怖→解放→懐疑→緊張→恐怖....

何度も繰り返すスパイラル。
サックスやフルートのソロが安定した音色を出す中、ずっと底鳴りしている打楽器が恐怖心を煽る。

管理人は、この曲が定演を開催する湘南高校吹奏楽部の気持ちそのものを表しているのかと思うほどで、演奏が終わった時の彼らの昂ぶり、疲労はいかほどであったろうか。

大胆な構成のプログラムが成功した瞬間でもあったのだ。

=第V部=
 
第二部での緊張の演奏から解き放たれ、部員たちのテンションはおそらく最高潮となっていたろう。
「演出ステージ」と呼ばれるこの第三部『雨と唄えば』は、彼らの思いが様々な形となって表現されていた。
セリフの中に社会風刺も取り入れつつ、というのが湘南テイストか。

また、『ミス・サイゴン』では、シリアスなストーリーに深刻にならず、立ったり伏せたり、楽器を持ち上げてみたり、ウェーブをしてみたり。

聴覚だけでなく、視覚でも楽しんでもらおうというサービス精神はとことん徹している。
 
  
  
  
  
写真最下段右はゲストのサックス奏者村松功介さん
 
  
指揮者の小澤篤さん。相変わらずのサービスぶりで、「音楽を通じて楽しんでもらおう」の精神に溢れていた

終了後
 
偶然であろうか。

管理人の席にほど近いところに座っていた中年の男性と、それよりかなり後方に座っていた少女(たぶん小学校低学年)が全く同じ感想を漏らしたのだ。

「面白かったぁ...」

そう。
確かに面白いのである。

それが奇を衒ったり、単に若手芸人のネタのまねでないところは評価に値すると思われた。

しかし、何よりも、OB楽団に代表される“伝統力”と、けしてそれだけには依存しないという“変革力”が融合するステージであった。
管理人にとって、それが最も嬉しいことであり、彼らやさらに彼らに続く後輩たちが、音楽の持つ「時空を超える力」に対して敬意を払いつつ、「新たな1ページを刻んでゆく」という決意もあって欲しい。

それが定演全体の空気として、中年のおっさんにも、年端もいかぬ少女にも伝わったのではないかなぁ...。
来年以降も『おもちゃのかんづめ』のような定演を楽しみしていますね。


末筆ですが、この素晴らしい演奏会にお招き下さった現役部員の皆さん、ありがとうございました。
今後とも、楽しい演奏活動を継続されて下さいね。

プログラム
 
第T部
 コンテストマーチ「マーキュリー」(作曲J.ヴァンデルロースト)
 その時歴史が動いた(作曲 谷川賢作 編曲 阿部真大)
 くるみ割り人形(作曲 P.チャイコフスキー)
 ラ・フォルム・ドゥ・シャク・アムール・ションジュ・コム・ル・カレイドスコープ(作曲 天野正道)

第U部
 旧友(作曲 C.タイケ)
 星条旗よ永遠なれ(作曲 J.P.スーザ)
 ゴースト・トレイン(作曲 E.ウィテカー)

第V部
 演出ステージ「雨と唄えば」
 メインストリート・エレクトリカルパレード(編曲 佐橋俊彦)
 『追憶』のテーマ(作曲 M.ハムリッシュ 編曲 浦田健次郎)
 ダンシン・メガヒッツ(編曲 星出尚志)
 ミス・サイゴン(C.M.シェーンベルグ)
 
最後は藤沢一中の吹奏楽部員たちも入っての合唱。感動的なフィナーレでした