北陵高校[6/28up] ■鶴嶺高校[7/1up]
 
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7月21日13:30 平塚球場で会いたい
 
 鶴嶺高校と北陵高校の交流戦(通称・鶴北戦)が行われていた6月13日(土)、第91回全国高校野球選手権大会神奈川県予選の組み合わせ抽選会が行われ、参加189チームのそれぞれの試合日程・対戦相手が決まった。

 シード校(春の県大会での上位16チーム)を中心にブロック分けする際、任意の2チームが同じブロックになる確率は16分の1であるが、奇しくも鶴嶺・北陵の2チームが同ブロックに配される結果となった。
(左図参照)
 
 管理人としては荏田高校をシード校とするこのブロックはある意味で理想的である。私立で甲子園経験のあるような学校もなく、悪く言えば「ドングリの背較べ」状態であり、当日のコンディション次第では十分に勝ち進めると予想される。

 勿論、そのことは鶴嶺・北陵以外の学校も感じているはずなので、大会までの残る期間をどれほどプレー精度を上げられるかということと、いかにコンディションをコントロールできるかということが大きな鍵となりそうである。

 両チームが順調に勝ち進めば、4回戦で激突することとなり、その会場は管理人が愛してやまない平塚球場である。その勝者が5回戦で桐光学園(たぶん勝ち上がってくるという予想です)への挑戦権を得る、というのが最高の展開である。
 
 鶴嶺は昨夏まで10年連続初戦突破という偉業を成し遂げている。北陵もこの10年では9回初戦を突破するという、公立高校としてはかなり鍛えられた両チーム。是非、管理人の小さな夢を叶えて欲しいものだ...

 ちなみに、桐光は10年連続ベスト8以上、うち3回は県代表という常軌を逸した安定ぶりで、何とかこの巨大な壁を公立の代表チームが突き破ってくれないかなぁ...と夢想している。
(別に桐光に恨みは全くないけど)

 そんなこともあり、例年以上に取材も熱を帯びるのであった....
 
伝統の「味」とは
 
 この夏、「部活ネット」が野球特集を始めてから7年目ということになる。正直言って、こんなに長く続くとは思っていなかったので、自分でも驚いたりしているが、長く見ていることによって自然と理解できる(ような気がする)ものもある。

 それが一般的に“伝統”と呼ばれるものなのかもしれない...

 脈々と続く先輩たちからの有形・無形の伝統は「ずっと同じ鍋で、ちょっとずつスパイスや水分や具材を足して煮続けるカレー」に譬えられるかもしれない。
(ん〜、既にあまりよい譬えとは言えない気もしています...)

 鶴嶺・北陵両校野球部のまごうことなき遺伝子たちに着目し、自らこの夏の大会を楽しみたいというのと同時に、読者の皆さんにも一緒に楽しんでもらえれば幸いである。

 
またも試練の“初戦が2回戦”
 
 もう慣れてしまってはいるのだが、抽選結果を見て「北陵、また1度勝ったチームと初戦か...」とは思った次第である。

 4年連続なのである。

 2006年 北陵第3シード 1回戦免除 2回戦:対鎌倉学園 負け
 2007年 1回戦免除 2回戦:対武相 逆転勝ち 3回戦:対鶴見工 負け
 2008年 1回戦免除 2回戦:対慶應藤沢 逆転勝ち 3回戦:対横浜創学館 負け

 北陵がすごいのは、初戦の相手が1度勝って2回戦に臨む強豪私学であった(昨年の慶應藤沢とはどちらも初戦同士)にも関わらず、3度のうち2度は逆転による勝利を収めていることである。

 しかし、その2回戦でかなり消耗するためか、3回戦が一つの壁になっている感もある。
(とはいえ、相手も強かったということなんだが)

 2009年 1回戦免除 2回戦:城郷−横須賀工の勝者

 そういう意味では今年はビッグチャンスでもある。5回戦で当たると予想される桐光学園までは強豪私立もおらず、うまく勝ち抜けて勢いをつけていけば、悲願の「打倒!強豪私学」も夢ではない。

 潜在能力も高いと評される今年のチームについて、いろいろ聞いてみました。

学生コーチ・小澤直人くん
 
 北陵では体育系の大学に進学したOBを呼んでの学生コーチ制を敷いている。

 2005年度のキャプテンだった小澤くんもその流れで既にコーチ4年目。先日の鶴北戦でキャッチャーフライをノックで打ち上げるシーンを見て「うまくなったなぁ」と管理人も感心しました。

 クラブチームのサザンカイツではバリバリの現役選手でもあるが、就職も決まって、いよいよ北陵野球部コーチとしては最後の夏。
 
管理人「小澤くんは自分の現役時代とコーチ時代を合わせて7年間(管理人と同じ!)北陵野球部を見てきたわけですが、引いた目線から、今年のチームの特徴を教えて下さい。」
小澤コーチ「能力的には間違いなく高いですね。」

管理人「特にどういった部分で?」
小澤コーチ「全般的に高いですが、打力は特にいいですね。打てるからバントもする、という戦術にも繋がっています。」

管理人「去年はバントは極力やらない、という方針でしたね。」
小澤コーチ「やりたくても出来ない、というのが正直なところだったと思います。今年はノーヒットでも得点できるような試合運びもある程度できますね。」

管理人「課題は何でしょう?」
小澤コーチ「コンディションがどうかな、と。ショートの大串は守備に安定感があるのですが、ケガで戦列を離れていますから。二遊間が戻って、層が厚くなれば...」

管理人「では、初戦に向けて。」
小澤コーチ「おそらく城郷が勝ち上がるのではないかと思いますが、キメの細かい野球をしてくる学校で、実は北陵はそういった野球に弱いところがあるんですね。そうしたことをどこまで詰められるか、ですね。」

管理人「ありがとうございました。」

主将・奥本涼太くん
 
 キャプテンの奥本くんは昨夏からのレギュラー。俊敏な走塁・守備に加え、二番打者としては「バスター、エンドランといった小技が決まると嬉しい」と言う職人でもある。

管理人「昨年もレギュラーだったから内側から見た今年のチームというのも比較可能かと思いますが...」
奥本主将「去年は2年生が5人先発メンバーに入る若いチームだったのが、今年は成熟してきたとは思います。でも、去年のチームはハートが強かったので、そこは見習わないと。今年は終盤、こちらがチャンスを逸して、相手に得点されるケースも多いので、その辺は直したいです。あと、内野の声掛けが足りないですね。」
 
管理人「この夏のチームとしての、或いは、奥本くん個人としての目標を聞かせて下さい。」
奥本主将「チームとしてはベスト8を狙いたいです。個人的には、去年はトップバッターとしてはあまり仕事ができなかったので、今年は二番としての仕事をしたいですね。」

管理人「そのためにはどういったことが必要でしょうか。」
奥本主将「まず、ポジションの固定・確定が精神的な安定感をもたらすのではないかと思います。今、二遊間が定まらない状態ですから。センターラインは大切なので、まずそこがカチッと決まるといいですね。あとは、内野のゴロの処理で“まず取る。そこから送球”という当たり前のことを当たり前にやれるかどうか。」

管理人「初戦は城郷−横須賀工の勝者とですが。」
奥本主将「相手のことはよくわからないので、7月13日に球場で見てから考えようと思います。ただ、初戦は大切にしたいですね。データを集めて、というより、どうやって自分たちの力を出すか、ということが大事だと思います。」

管理人「北陵野球部というのはどういうところでしょうか。」
奥本主将「先輩・後輩の仲がよい、というのがいい点ですが、自己中心的な人もいて、言うだけで聞かないケースもありますね(苦笑)。」

管理人「はは。キャプテンは苦労するわけだね。では、最後に君の大切にしている言葉やモットーがあれば教えて下さい。」
奥本主将「“集中”ですね。野球をやっている時は勿論ですが、人生の他の場面でも集中してやれるかどうかは大きいと思います。」

管理人「ありがとう。では、集中力を持って最後の夏に挑んで下さいね。」
 

北陵野球部の“ツインDNA” マネージャーコンビ
 
 
左が上久保めぐみさん、右が臼井祐子さん。この日の取材のため、修学旅行(沖縄)で購入したシャツを着てくれた
 
 
 管理人はこの二人にインタビューするのをとても楽しみにしていたのであった。1年前から、「来年は君たちの番だからね」と伝えてあったほどなのである。勿論、ふたりが可愛らしい女の子であるという点を抜きには語れないところではあるのだが(笑)、彼女たちこそが『正統北陵野球部DNA』の持ち主だと確信しているからなのである。

 北陵高校は現在8名(!)の女子マネージャーがいる大所帯。なかなか全員にお話を聞くというのは難しく、3年生だけにさせてもらっている経緯があり、長らくお待たせしました。

 思い起こせば、小澤コーチをキャプテンとしてインタビューした2005年夏、上久保さんのお姉さん(あゆみさん)を代表マネとして、そして臼井さんのお兄さん(大輔くん)を「ショートに抜擢された1年生」ということでそれぞれインタビューしていたのであった。

 光陰矢のごとし...

 その妹たちが揃って野球部のマネージャーという恐ろしい時代になっていました。

 ちなみに、上久保さんのお姉さんがマネになった頃、北陵野球部にはマネージャーが一人もいない暗黒時代であった。そのことにも隔世の感がある。

管理人「月並みな質問で申し訳ないけど、なぜ野球部のマネージャーに?」
上久保さん「初めから決めていたわけではなかったんですが、中学時代にやっていた軟式テニスはもう十分かなぁと思って。やはり姉が野球部のマネージャーだったことは影響していますね。」
臼井さん「兄が北陵野球部で選手をしていたので、その雰囲気がよくて...」

管理人「臼井さんは、高校を選ぶ段階から野球部のマネージャーということを考慮していたのかな?」
臼井さん「はい。そうですね。」

 思うに、この二人は直接的に兄・姉から得た情報もさることながら、それに付随した言葉にしづらいもの(北陵野球部DNAと称しておく)をキャッチして、自らの中に取り込んで今に至っている。このことがさらなる輪を広げて、後輩たちに伝わるのだと推測される。

 臼井さんのお父さんは管理人の高校時代の同級生。彼女と上久保さんはそのお父さんのことをこっそり「タダオさん」と呼んでいたりする。余談ですが...

管理人「でも、途中でツラくなったり、ということもあったんでしょう?」
ふたり「ツラいこともありましたが、辞めようと思ったことはありません。部員たちが好きで、その部員たちがいるからやめることは考えられなかったですね。あと、一人じゃなかったというのは大きいですね。」

管理人「今年はベンチ入りできなかった選手が4人いると聞いています。彼らに特別に言葉を掛けたとは思いませんが、何かメッセージがあればこの場でお願いします。」
ふたり「ベンチに入れないからといって要らない選手ではないので。盛り上げ役などはいなければ困りますし、一緒に闘って欲しいですね。」

管理人「北陵野球部をひと言で言うとどんな感じ?」
上久保さん「努力家...ですかね。皆、一生懸命やりますから。」
臼井さん「楽しい!笑顔!野球を含めた高校生活を楽しんでいるっていう感じです。」

管理人「では最後に、最後の夏に対する思いを聞かせて下さい。」
上久保さん「一生懸命プレーして欲しい。勝ち負けはしかたないけど、縮こまって負けたら悔しいじゃないですか。そうなれるよう、皆の体調に配慮したいです。」
臼井さん「言葉にできない、というのが本当のところです。ありのまま、全力で楽しんでやって欲しい。普段やっていることを試合でもやってくれれば...。全員が力を出せば、ヤバイです(笑)」

※編集・注 上記「ヤバイ」はたぶん「すげぇことになる」の意です。

管理人「誰に一番期待してる?」
ふたり「國正くん!彼が投げると盛り上がるし、誰よりも野球のことを考えている。今日も練習前にずっと走ってた。あと、4番に打って欲しい!ちょっと打率低いかも(笑)」

 というわけでした。ベンチには初戦は上久保さんが、次戦は臼井さんが入るというローテーションとのこと。ふたりとも2回ずつ入れるくらいだといいんだけど。

 心優しく、逞しく。どんどん“母親化”している二人に幸あれ!また、球場で会いましょう。

追記)
 インタビュー後、臼井さんはこっそり「うちのお父さん、組合せが決まってから、どうやって仕事を休むかずっと考えています...」と打ち明けてくれた。

 野球で家族が繋がれるとは素敵だ。臼井家にも幸あれかし!

傷心のエース,最後の夏で再び輝け〜國正光投手
 
  
写真中は6月13日の対鶴嶺高校戦。右は昨夏初戦、慶應藤沢戦での力投
 
 1年の時から注目されてきた逸材、國正光くんはいよいよ背番号1をつけて最後の夏に挑む。

 彼は頭脳明晰、野球センスにも溢れるものがあるが、同時に“腰痛”という爆弾も抱えている。「入学してからこれまでフルに動けたことがほとんどない」という彼の言葉からもその苦悩と、最後の夏に懸ける意気込みは伝わってくる。

管理人「いよいよ最後の夏が近づきました。去年は橋場くん(昨夏のエースで主将)がいる気楽さもあったかと思いますが、今年は自らが背番号1を負うことになりますね。」
國正くん「エースとしての自覚が求められますし、責任がありますね。とにかく勝つことで自信をつけて、チームからの信頼を得たいと思います。」

管理人「ケガの回復具合はどうですか?」
國正くん「まだ6〜7分というところてすが、この間の鶴北戦(6月13日)に3イニング投げることが出来たので、ここからのレベルアップは早いと思います。」

管理人「どういうピッチングをしたいですか。」
國正くん「私立の強打者に力負けしないようなパワーやスピードはないので、それ以外のところでどれだけカバーできるのか、というのが課題です。それがキレであったり、変化球であったり、ですね。」

管理人「昨年の夏は慶應藤沢戦のピッチングを見させてもらって、今言ったような投球が出来ていたように思えましたよ。」
國正くん「そうですね。あの試合がこれまでのベストピッチだと思います。ただ、その次の試合(横浜創学館戦)はショックでしたね。野球に対する考えが変わるような...」

※編集・注 彼は昨夏の創学館戦で先発し、初回に4点、2回に3点を取られて失意の降板を経験している

管理人「では、最後の夏に懸ける思いを教えて下さい。」
國正くん「1戦1戦、ですね。とにかく初戦を乗り切りたいです。ケガをしたことで精神的に成長できたと思うので、自分のピッチングをしたいと思います。」

 管理人が観戦させてもらった昨夏の慶應藤沢戦での國正くんのピッチングは圧巻だった。流れを引き戻して、北陵の逆転勝利へと結びつけたあの輝きが、まさしく彼の名前にように、もっと光ることを願わずにはいられない。

 頑張れ、エース!
 

切なる願い「ベストメンバー揃えば...」 松島勝司監督
 
  
 左)今年の鶴北戦より 中)練習での指示 右)昨夏、慶應藤沢戦ベンチにて
 
 松島監督とは6度目の夏。その初年度(04年)のチームが「能力的には最高だった」というのが、管理人との話ではしばしば登場するフレーズである。実際、あのチームはその前年の県代表である横浜商大と接戦を演じるなど、見ていても楽しくはあったのだが、ついにあのチームに比肩するチームが出来つつある、とのこと。

管理人「今年のチームの特徴などを教えて下さい。」
松島監督「能力は高いと思います。エースの國正と本来なら二遊間を守る岡部(昨夏はショート)と大串(2年)を故障で欠いていても練習試合では8割くらいの勝率がありますから。彼らが戻って、普通に力を発揮してくれれば、公立校には負けないと思います。」

管理人「國正くんの回復ぶりはいかがですか。」
松島監督「まだまだだとは思いますが、この間の鶴北戦で見方がエラーを連発したことで、少し力を入れて投げられるようになったのは、よかったのかもとれませんね。あとは本番までに徐々に方のスタミナをつけてくれれば。」

管理人「継投も考えられると思いますが、その辺は..?」
松島監督「國正が投げられない間、練習試合でチャンスを掴んで実績を残したのが1年生の二人のピッチャーでした。彼らには背番号も与え、特別の練習メニューを毎日ボードに張り出すようにしました。これは2年生にもっと頑張れ、というメッセージという意味もあるんですが。」

管理人「二人はどういうピッチャーですか。」
松島監督「葛城は力がありますね。将来性豊かだと思います。陸野(たかの)は即戦力ですね。二人とも精神的にタフで、自滅しないコントロールがあります。本番でも投げる機会があると思いますよ。」

管理人「守備はどうですか。鶴北戦ではちょっと連鎖的なミスも 出ましたが。」
松島監督「やはり主力に戻ってきてもらわないと、というところですね。ショートの大串は強肩でスローイングが安定しています。ショートは身体能力が高く、判断能力とハートの強さが求められますから、彼がいるといないではかなり違いますね。セカンドの岡部も肩は強いですし、カットプレーなどで力を発揮するはずです。これからはメンバーを絞って、実戦的守備練習を質・量ともに増やしてゆくことになります。」

管理人「さて、看板の打撃ですが、いかがですか。」
松島監督「まぁそれがウリですから。切れ目のない打線が組めると思います。4番と9番を入れ替えても遜色のないような。とにかく強豪私立からでも5点を取る、という野球がしたいですね。うちの投手陣でも、うまくやればそういった強い相手に5点以内で抑え切ることは可能でしょうから。」

管理人「堅く1点を取りにいく、というよりはビッグイニングを作る、というイメージですか?」
松島監督「その通りです。今年は特に左投手対策として、バントもやることがありますが、させる子は決めてあります(笑)。バントをうまくなるのに時間を割くより、技術的にも打つことの方が易しいですから。」

管理人「それでは初戦に向けての意気込みをお聞かせ下さい。」
松島監督「対戦相手のことはあまり考えないですね。頭デッカチにするよりも、その場の感覚を大切にしてもらいたいと。ただ、城郷も横須賀工業も資料が何もないですから、13日の両チームの試合は全員で見に行かせるつもりです。とにかく自らの力を8割出せれば、と思っています。そのためには主力選手たちのコンディションが大きな問題になりますから、そこはケアしたいですね。」

 管理人の帰り際、松島監督は「甲子園に出た時は必ずインタビューして下さい」と笑顔で仰っていた。

 それは冗談のようで、けして冗談ではないのだと、ようやく管理人は理解できるようになった。高校野球に携わるあらゆる指導者・選手にとって“甲子園”という言葉ほど魔力を持つものはない。それを目指さなくなった時、指導者としての矜持も失うのかもしれない。

 今年も応援させてもらいます。
 
  
期待の1年生コンビ、陸野くんと葛城くん。メニューの中にある「ラケット振り・シャフト振り」というのは松島監督が自らの高校時代に肘の使い方の修練に編み出した練習方法とのこと。
 

2・3年の選手とマネージャー。元気いいね!


 

 
Welcome to a New Decade 新たなる10年への出発
 
 鶴嶺高校野球部と言えば、「小さなことからコツコツと」というイメージもあるが、それだけでは10年連続の初戦突破は叶うまい。やや逆説的ではあるが、ひたむきにコツコツとバントなどの地味な戦術を徹底するためには、打ってランナーとなる攻撃力が不可欠である。獲った得点を守り切る投手力・守備力も必要なのである。

 そうした基礎力に支えられて“雨だれ戦術”は成立する。

 また、鶴嶺高校野球部をサポートする選手の父母たちのパワーも見過ごせないものがある。管理人は6月13日の鶴北戦、27日の伊志田高校戦を観た際、お母様たちから冷たいお茶を頂いた。大会ならともかく、普段の試合から集まって(いくら我が子が可愛いとはいえ、です)準備してきたお茶を振る舞うということは簡単なことではないと思う次第である。

 父親たちはお茶をもらう側(笑)であったが、管理人は何かほのぼのとした「鶴嶺らしさ」を感じずにはいられなかった。

 さて、サブタイトルの「人のよい野球からの脱却」はそうした鶴嶺野球部の“らしさ”に於ける永遠のテーマかもしれない。

 上記写真は6月27日に行われた伊志田高校との練習試合のスコアである。スコアからだけではわからないであろうが、4点差の9回オモテ、鶴嶺は無死満塁という絶好のチャンスを迎えた。ここで1点でも取っておけば、相手の息の根を止められる(表現が殺伐していて申し訳ないッス)ところなのだが、無得点に終わってしまう。試合には勝ったのだが、そこに課題は潜んでいると見えた。

 善戦で終わるか、その先までたどり着けるか。

 さあ、新たなる10年へ。今、ここに携わる人たちの歴史的証言(?)をいくつかご紹介したい。
 
  
お母さんたちはおそらく横の連絡を取り合って試合会場にお茶を持ってきてくれるんだね。選手諸君はまさしく「勇ましく躍って」それに応えて欲しい
 

『攻めるバント・攻める守備』 キャプテン・島崎友博くん
 
 彼が高校進学の際、鶴嶺を選んだ理由は2つ。

 その1:野球部がしっかりしている

 彼のお兄さんも野球をやっていて「鶴嶺の菊地原監督(当時)はいいよ」と言っていたのがずっと脳裏から離れなかったらしい。そのお兄さんは鶴嶺には行けず、弟がようやくその夢を叶えたというわけであった。

 その2:学校行事が充実している

 鶴嶺高校は「行事の鶴嶺」と言われるほど、高校生活を楽しめるイベントが目白押し。野球部員はそうした行事の裏方としても活躍しているとのこと。

管理人「今年のチームの特色を教えて下さい。」
島崎主将「元気がいい、ということです。負けていても声が出て、チームワークがひじょうにいいですね。」

管理人「戦力的にはどうですか?」
島崎主将「部員数がそれほど多くないので、競争が足りない面がどうしてもあって、そこはやや不安でもあります。ただ、投手力を含めた守備力で『守り勝つ』野球はできると思います。」

管理人「キャプテンから見て不安のあるポジションは?」
島崎主将「サード・レフト・ライトに2年生が入るので、そこですが、特にサードですね。今、二人の2年生でポジション争いをしていますが、積極性が決め手になるかと思います。頑張って欲しいという期待もあります。」

管理人「去年まで10年連続初戦勝利という偉業を達成していますが、そのことはプレッシャーになってますか。」
島崎主将「正直言ってプレッシャーですね。でも、先輩たちが築いてきた『守り勝つ』野球こそが鶴嶺の野球だと思って頑張ります。」

管理人「守備対攻撃の練習量だとかはどうですか。北陵では2:8だと言ってますが。」
島崎主将「うちは5:5だと思います。どうしても打撃はアテにならないところがありますから。ただ、今年はセーフティを含むライン際への“攻めるバント”を取り入れています。新チームになった時、バント失敗が多くて、ファールになってもいいから攻めのバントをやろうということになりました。」

管理人「鶴嶺は一昨年の夏、ピンチでのトリックプレーを決めて、流れを引き寄せたこともありましたが、“攻める守備”といったこともあるわけですか。」
島崎主将「そうですね。そういったことを含めた“守り”なんだと思います。」

管理人「キャプテンのモットーをお聞かせ下さい。」
島崎主将「“努力は裏切らない”です。新チームになってからあまりバッティングが振るわなかったのですが、冬場にバットを振り込んで、春以降は打てるようになりました。打率もチームで上位になりました。」

管理人「では、最後の夏に懸ける想いを聞かせて下さい。」
島崎主将「練習の成果をできるだけ出して、1つでも多く勝ちたいです。上溝高校についてはわからないところも多いですが、まずは自分たちの野球ができるようにしたいです。」

管理人「ありがとうございました。期待していますね。」
 
  
対伊志田高校戦では“攻めるバント”も決めた島崎主将

「ふたりだったからたどり着けた最後の夏」 マネージャー
 
 毎年思うことではあるが、野球部のマネージャーは“野球部を映し出す鏡”のような存在である。

 昨年インタビューした際はまだ2年生だったこともあって、どこか遠慮がちだった金谷理子さん(写真右)と、責任マネの清元美里さん。今年3年生となった二人のマネージャーもまさしく鶴嶺野球部のありようを映すかのようである。

 金谷さんは中学時代はソフトボールをやっていて、野球部のマネージャーに憧れていたそうな。清元さんは中学時代は陸上部で長距離ランナーだったが「人の役に立ちたい」という性分でマネージャーに。

管理人「野球部のマネージャーは忙しいし、もっと遊びたいと思ったことはありませんか?」
清元さん「ええ。自分たちの1級上にはマネージャーがいなくて、それが原因でストレスが溜まってしまい、正直、辞めたいと思っていた時期がありました。1年の冬頃です。あの時、私一人だったら辞めていたと思います。」
金谷さん「辞めたら後悔すると思いました。試合で一丸となった時は盛り上がる感じで楽しいですし。」
清元さん「そうですね。プレーしているのを一番近くで見られて、選手の成長が見て取れるところがマネージャーの醍醐味ですから、辞めなくてよかったです。」

管理人「今年のチームのよいところを教えて下さい。」
金谷さん「チームワークです。」
清元さん「楽しいチームです。」

 おっ、キャプテンと同じことを言ってますね。

管理人「期待する選手を教えて下さい。」
ふたり「福元くんをはじめてとするピッチャー陣です。いい時と悪い時がハッキリしすぎている、というのと、リリーフで回の途中から出てきた時にコントロールが定まらないので、集中力を失わずに、と。」

管理人「なかなかよく見ていますね。」
ふたり「心配性になりました(笑)」

管理人「最後の夏に懸ける想いを聞かせて下さい。」
金谷さん「10年連続で初戦を勝っているので、とにかく初戦に勝ち、去年を超えるように3回戦までは行きたいですね。」
清元さん「100パーセントの力を出し切って欲しいです。そうすればきっと勝てるので。」
金谷さん「そのために、選手がやり易いよう、私たちがやれることは全てやりたいと思います。」

 1回戦は金谷さんがベンチ入り。2回戦は清元さん、というローテーションで進行予定。清元さんは4回戦(対北陵?)・5回戦(対桐光学園?)で勝って嬉し涙を流しているところを想像しているとのこと。素敵...

 管理人も3回戦以降なら絶対に応援に行ける(1・2回戦は日程にやや問題があるんすヨ)ので、何とか勝ってもらいたいわけだが...

 二人のマネージャーのためにも、頑張れ鶴嶺野球部!
 
現在は1・2年にも一人ずつマネージャーがいる鶴嶺。計4名でこの夏を戦います

控え選手への優しくも厳しい眼差し 山口真也監督
 
  若い先生が赴任したなぁ、と思ってから既に3度目の夏となった。一歩ずつ着実に階段を昇る感のある山口監督にお聞きした。

管理人「今年のチームの特徴を教えて下さい。」
山口監督「昨年までもそうでしたが、自分たちでゲームを作って9イニングを押し切っていくほどの強さがないので、ゲームを支配し続けられないところがあります。1つのことに集中して本領発揮しないとならない状況が来るまでは、なかなか力を発揮できない人のよさは相変わらずかもしれません。」

管理人「特に気をつけて指導されていることは?」
山口監督「個々の力はありませんから、意識の低い選手がいるとチーム全体に影響が出ます。そうならないために『これから何をするのか』ということの確認をして、大切なところに集中できるよう話をします。2年と3年とは少し力の差がありますが、このところ2年も成長してきて楽しみになりました。2年生が“3年生のために”と思えるようなチームにならないと、勝てないですからね。」

管理人「鶴嶺の一つの重要な戦術でもあるバントや『守り勝つ』といった考えについてはいかがですか。」
山口監督「新たに赴任された部長の亀山先生(昨夏は新磯高校監督)の眼を含め、バントの重要性は再確認しました。『守り勝つ』というのも、受け身になるという意味ではなく、『守りで勝負を掛ける』という意味でキャプテンも使っているのだと思います。高校生ですからエラーはしかたないところですが、そのあとを崩れずに我慢できるか、ということが実行できた時、接戦をモノにできるのだと思います。」

管理人「いろいろな面から監督が期待している選手を教えて下さい。」
山口監督「まず、多賀谷でしょうか。レギュラーではないのですが、一番声を出している選手で、彼が代打で1本打てばチームがとても盛り上がりますから。あと、二番手ピッチャーの添田ですね。テンポ・緩急・制球といったことへの意識をもう一歩詰めて、最後の瞬間まで苦しんで苦しんでやって欲しいと思います。」

管理人「この夏の目標を教えて下さい。」
山口監督「生徒たちは“ベスト16”を目標にすると言っていますし、一丸となって一つ勝つことで成長していけば、それも達成できる可能性もある位置かと思います。そのために「今、何をやるのか」ということを徹底してゆきたいですね。」

管理人「最後に、中学生に向けて、鶴嶺高校野球部のいいところをアピールして頂けますか。」
山口監督「高校で野球をやるということは、人間的に成長するチャンスがある、ということです。鶴嶺高校の野球部では、部員たちが学校行事などへの積極的な手伝い、また、野球を通じての人と接する機会が多いので、世代で繋がってゆくこともできます。」

管理人「ありがとうございました。」

 前日までの雨天によりグラウンドコンディション不良で「集会室」という場所でのインタビューとなったが、この部屋がなかなか興味をそそるものであった。マッサージ用の(?)ベッドのようなものがあったり、研究用の(?)ビデオセットがあったりと...。
  
 
集会室の設備。何となく楽しそうな気がするけど、そうでもないか...

意外に(失礼!)的確な「観戦オヤジ談義」
 
 高校野球と切っても切れない縁のある“ネット裏オヤジ談義”。

 選手の父親というのは世代的に40代が多いかと推測されるが、それは管理人とも世代的に近いわけで、幼少の頃「巨人V9」をリアルタイムで経験し、アニメ「巨人の星」を見て土曜の夜にいきなり路地でウサギ跳びをした残党である。

 彼らは長じて、ビールを飲みながらプロ野球を観戦することを習慣化させる世代でもあり、少なくとも戦術眼や心理戦に長けている人たちでもあると再認識した次第である。
(っつーか、少なくともそうしたことをちょっとは語れる知識や経験がないと、ネット裏談義には参加しづらいはずだ)

 6月27日、鶴嶺高校グラウンドで行われた対伊志田高校戦のネット裏でもそうした愛すべきオヤジ軍団と遭遇。うち一人、3年生で4番を任されている小谷くんの父君にミニインタビューしてみました。

管理人「ご自身も野球をされていたのですか?」
小谷くん父「いいえ。だから技術的なことはあまりわからないのですが。」

管理人「息子さんの試合はよく観に来られるのですか?」
小谷くん父「試合はよく来ます。家では時々野球の話もします。」

 とのこと。子供の部活を話題にできる家族というのは、ほんわかした幸福感が漂う。

 などと話をしている間も、別のオヤジたちは鶴嶺高校だけでなく、対戦相手の伊志田高校の作戦や戦況判断もしてくれて、管理人はこっそり新たな情報をつかんだりしている。

 野球というのは本当に“間”(ま)のスポーツである。投手がマウンドでボールを保持している時間は、野球好きの人間にとって、これほどの至福はないのでは、と思えるほどである。そして、静かに耳を澄ませていると、高校野球のネット裏という場所が、素人の・即席の解説者が無責任に好きなことを言っても許されるところであり、実はそれも高校野球という風物詩を彩る不可欠な要素の1つなのだと理解できる。

 今度は球場で会いましょう。
  
写真中は小谷選手のお父さん。右はその息子(=小谷選手)
  
  
 

前キャプテンの視点
 
 管理人は“彼”が伊志田高校戦の3回ウラにネット裏に登場した時、それが前キャプテンの山田くんだとすぐには気づかなかった。右の写真(昨夏大会時のもの)に較べていくぶんふっくらして、何より髪が伸びていたので。失礼しました。

 で、彼は今年のチームの試合もしばしば観ているとのことだったので、少しだけ話を聞いてみました。

管理人「今年のチームは山田くんから見てどう映りますか。」
山田くん「自分らの代よりも野球そのものに対する意識は高いですね。去年は自分や新井(昨夏のエース。通称「おかわりくん」)がプレーで引っ張る感じでしたが、今年は何としてもアウトを取るといった気持が強く出ていてよいと思います。」

管理人「何か課題は?」
山田くん「打つのも去年よりはいいのですが、シード権を懸けた春の大会(3回戦の三浦学苑戦)では8点取りながら負けてしまうというモロさもあるので、あとはそこをどう直してゆくか、です。」

 試合終了後、彼は現選手たちに「勝っている時は走塁もノリで行けるけど、負けている時こそ積極的な走塁を心掛けて欲しい」というメッセージを発していた。

 ...さすが前キャプテン。

 でも、野球をやっていないのは勿体ないなぁ...。

 彼くらいの運動能力があっても高校までしか硬式野球をやらないのが平均的である。そうしたプレーヤーの受け皿としてクラブチームもあるので、可能なら続けてもらいたい。ま、その辺り、聡明な彼も考えた上での今があるのだろうけど。
 
  

  
鶴嶺高校三本柱。福元くん・坂口くん・添田くん
 
今度は君たちが新しい歴史を作っていって下さい!